自分自身の"今まで"と"これから"を大切にするために

今までの自分を見つめ直す

 「自分に万一のときが来たら・・・」ということは考えたくないものです。ましてやまだ若い方はこれからも楽しむべき人生がたくさんあり、今の自分には関係のないことだと思われるかも知れません。しかし、そのときは必ずやってきます。その瞬間に家族へあなたの想いのすべてを伝えることができるでしょうか?
 「事故」が原因であれば、それを伝える時間もありません。
 「病気」が原因であれば、"万が一のとき"が来ることを知らされず、家族に想いを伝える時間がないかも知れません。
 「認知症」となったら、伝えるべきことすら覚えていないかも知れません。
 時間があったとしても、これまで生きてきたあなたの人生はすぐにご家族へ伝えることができるほど、整理できているでしょうか?
 具体的には、自分の氏名はもちろん、学歴・職歴、家族、交友関係(友人・知人・万一の時に知らせたい人)、葬儀社、菩提寺、弁護士、税理士、書類の保管場所、財産目録、語り継いで欲しい大切な思い出、守ってほしいこと、感謝の言葉、今だから言えること、戒名、さらには尊厳死、その他伝えたいことなどを手帳やノートに整理します。そうするときっと家族に伝えたいことが整理され、今後の人生を生きていくための教訓や新たな目標が見えてくることと思います。

遺言はあっても邪魔にならない、でもなくては困る

 「私の家族は仲がよいから遺言書などなくても大丈夫」-悲しいことですが、その想いとは裏腹に、生前仲の良かった家族が自分の残した遺産を巡って骨肉の争いを始めてしまうことがよくあります。相続がおきると相続人それぞれ千差万別です。それぞれに想いがあり、思い出があり、問題があり、また家族もいます。「うちに限って争いは生じないから平気」ではなく、「万一何が起こっても平気」というスタンスで準備をすすめることが重要になってきます。そしてその準備の手助けになるのが遺言という伝達手段です。遺言は、自分の遺産の処分を、妻・子どもなど残された人に伝え、その実現を図ろうとするものです。また、家族に対する考えや想いなど、意思としても残すことができます。ぜひ自分を見つめ直すのと同時に、遺言書を残すことをおすすめします。
遺言書の作成においてポイントとなるのは次の4点です。

①適法な遺言
 遺言は適法に作成しないと法律上有効にならず、蓋を開けてみるとその実現を図ることができないという事態にもなりかねませんので、きちんとした手続きを踏み作成する必要があります。遺言には、一般的に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの方式が多く用いられています。自筆証書の場合、公証人や証人を必要としないことから簡便なようですが、不備(署名・捺印もれ、紛失、遺産が特定できないなど)があれば無効になることがあります。より確実性を期すためには、公証役場に保管され、より安全確実な公正証書の作成をおすすめします。

②遺留分を考慮した遺言
 遺留分とは、遺言の内容にかかわらず、法律で相続人が最低限取得できる割合を保障するものです。遺留分を侵害する遺言ですと、遺留分を有する相続人が、遺留分に対する不足分の取戻しを請求(遺留分減殺請求)することができます。
 遺産争いを生じさせないために作成したのにもかかわらず、減殺請求が生じては元も子もありません。遺留分を考慮した遺言を作成する必要があります。

③相続税を考慮した遺言
 これには、次の2点があります。

(イ)税法上の有利な特典を活かしているか
 相続税は遺産分割の工夫によって特典の適用の可否が変わってくるので、納めるべき税金も大きく変わってくることがあります。
 有利な特典とは、主に「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」があります。前者は配偶者が財産を取得した場合に一定割合までは非課税となる特典、後者は居住用や事業用の土地を相続した場合に要件次第で評価減される特典です。これらを最大限活用できるような遺言を作成する必要があります。

(ロ)納税を考慮した内容か
 各相続人の納税についても考慮して遺言を作成するべきです。例えば妻には、今後の生活を考えて自宅と現金、子どもには、更地だけを分ける遺言書を作成した場合、相続がおきたとき子どもは相続税をすぐに納めることができません。このケースではあらかじめ納税額相当の現金を子どもに分ける遺言を作成するか、物納まで視野に入れて遺言を作成する必要がでてきます。

④何度でも書き直し可能
 遺言のメリットの一つとして、何度でも書き直しが可能であるという点があります。
 1度作成したからといってそのままにするのではなく、遺言は日付の新しいものが常に有効となるので、自分の意思が変わる都度書き直しをしても差し支えありません。
 
 最後に、遺言で遺産を特定の子どもに多く取得させるのであれば、その理由は必ず書くべきであると思います。そうしないと「同じ子どもなのになぜ自分だけ少ないのか?」、「自分は可愛がられていなかったのでは?」など、逆に兄弟が不仲になってしまうケースがあるからです。例えば、「家と墓を守ってくれる長男に多めあげる。」、「不動産もあげるけど借金も背負ってもらうから多めにあげる。」など、遺言書の付言事項として記載するのがよいでしょう。

「連年贈与」という言葉を聞いて分かる人はほとんどいないと思います。これは国語辞典にはのっておりません。それはなぜかといいますと、この言葉は税務用語、もっと率直に言いますと、税務署が作った言葉ということになります。
 その内容は、毎年定期的にしかも定額の贈与をした場合に、その贈与の全体から考えて最初から一連の行為があったものとみなされてしまう贈与のことを言います。

 具体的に説明しましょう。暦年贈与の場合、贈与税の基礎控除は各人に毎年110万円あります。それを使って、例えば父親から長男に対して毎年100万円の現金贈与をするとします。これを10年続けたら、100万円×10年=1000万円の現金が父親から子供に財産移転することができます。
この場合、財産をもらった子供には毎年基礎控除以下の贈与ですから、贈与税は0円、つまりかかりません。一方贈与する父親のほうは財産が減少しますので、将来の相続財産が減少して、結果としてその移転した部分には相続税がかかりません。
 贈与税も相続税もとれなく悔しいというわけではないと思いますが、その贈与について次のように考えるようです。
 つまり、課税当局は「贈与する最初の年に、もともと1000万円の現金をあげるという契約があったはずだ。それを10年に分割してあげたのだ」このように考えるのだそうです。
 要するに、毎年、定期・定額の現金贈与をした場合には、毎年の贈与が全て繋がっている=連年とみて連年贈与の認定を受ける場合があるようです。

 上記のように考えますと「毎年100万円を10年にわたって渡す契約」があったと見られて、これは10年契約の定期金の贈与に該当します。この場合の評価は、契約金総額の1000円×60%=600万円となり、82万円の贈与税が子供にかかってきます。

 このように定期・定額の贈与をしますと連年贈与の認定を受ける可能性がありますので、毎年金額を変える、つまり、たとえば今年は100万円、来年は120万円、再来年は110万円というような贈与にしたほうがよいと思います。

個人的には、例え同額の贈与であっても各年1回1回の契約書があり、贈与者・受贈者が各人署名捺印していれば毎年贈与の意思確認できるので問題はないとは思いますが・・・

 税務トラブルを避けるのであれば金額を変えたほうがよさそうです。

自社株贈与の注意点「知って得する贈与税(第10回)

自社株贈与と聞いてまず思い浮かぶのは何でしょうか?多くの方はおそらく会社の"事業承継"を思い浮かべられるのではないでしょうか?つまり、会社オーナーの父が息子に会社を継がせるために生前に自社株を贈与するケースです。
その"事業承継"を踏まえた自社株贈与のポイントをお話したいと思います。
(1)自社株は分散させない
現金贈与の場合、その贈与に使途がある場合もありますが、それ以外は相続税(・)対策のために行うのが一般的です。その場合、より複数の子や孫に現金をあげてなるべく贈与税の負担が軽減されるようにするかと思います。不動産贈与の場合も共有はなるべく避けるべきですが基本的には目的は一緒だと思います。しかし、自社株には現金や不動産とは大きく異なる性格があります。自社株の贈与は会社の事業承継の位置付けがありますので、贈与を受けた子供は後継者として会社を継続・発展させなければなりません。そのためには後継者により多く意思決定権である自社株を集中する必要があります。子供は皆可愛いのはわかりますが、他の兄弟に分散させてしまうと、その兄弟の相続によって甥や姪などに自社株がさらに分散してしまい、将来、後継者の息子が買い集めるのに苦労するということにもなりかねませんので絶対的に避けるべきです。つまり、自社株贈与は相続税の観点と議決権を後継者へ集中するという両輪で対策を進めるべきであるといえます。
(2)贈与するタイミングを誤らない
父と息子のように親子間の贈与であれば贈与の移転コストは低いに越したことはありません。通常はできるだけ低い贈与税で息子に贈与したいと考えるのが当たり前です。しかし、自社株の場合一つ間違えるとその贈与税が多額に生じてしまうことがあるため要注意です。自社株は上場株式のように市場価格がありませんので、評価をする必要があります。ここでの評価の細かいお話は割愛しますが、その評価は会社の業績に大きく左右されます。(自社株の評価要素は会社の業績だけではない場合もあるのでご注意下さい。)
具体的には贈与日の直前の決算業績を基に株価が計算され、その業績が良ければ株価は高くなりますし、悪ければ株価は低くなる傾向にあります。したがって、贈与税を低くおさえるためには、会社の業績が悪いとき、ないしは退職金の支給や含み損を抱える不動産の売却などの理由で利益が低くなったときが自社株を贈与するチャンスです。
一つ例を用いて説明してみましょう。
 A社のX1年3月期は業績不調で1株あたりの株価は1,000円、しかし、X2年3月期は業績が回復し1株あたり5,000円の見込みです。
この場合、X2年3月31日までに贈与されれば株価は1,000円なのに対し、同年4月1日以降に贈与された場合は5,000円の株価になります。つまり、期をまたぐとたった1日で贈与の株価は5倍にも跳ね上がってしまうことになるのです。従って必ず贈与する時期を見誤らないよう注意しましょう。さらに、前回以前のコラムでもご紹介している相続時精算課税制度を利用することによって、株価を低い時期に贈与すれば、相続時に株価が上昇していたとしても贈与時の低い価額で相続財産に取り込むことができるので、あわせて活用することをおすすめします。
(3)贈与の証拠をしっかり残す
例えば上記の例で贈与のタイミングを見誤ることなくX2年3月31日に贈与ができたとします。この場合どのようにその贈与日の客観的な証明を行いますか?現金であればお金を振り込めば通帳に記録されます。不動産であれば登記によって記録が残ります。自社株の場合はどうでしょうか?
ほとんどの非上場会社は、譲渡制限が付されており、取締役会等の一定の手続きを経なければ勝手に自社株を贈与することができませんし、それらの書類は会社として作成する必要があります。また、株主名簿も変更するでしょう。そういう意味では一見十分に客観的な記録を残しているといえます。しかし、それだけでは問題とまではならないもののもう一工夫あると良いと思います。それは贈与契約書の作成は当然として、そこにX2年3月31日付の確定日付を取ることです。なぜかというと、ファミリーで経営を行っている会社の場合、これらの書類は主観的に作成ができてしまうからです。つまり書類上の日付はバックデートでも作成できてしまいます。たとえそうではないとしても嫌な疑いをかけられてしまうこともありますから客観的な証拠の確定日付を取っておくことを強くおすすめいたします。
(4)納税資金が必要
最後に、不動産贈与と同様に自社株には一般的に換金性がありませんので、贈与税の納税資金をどう確保するかの検討が必要になってきます。

以上、対策は早いに越したことはないと思います。後継者が決まっているのであれば早速、自社株の贈与を行って、円滑な事業承継を目指しましょう。

不動産贈与の注意点「知って得する贈与税 第9回」

子供に不動産を購入してあげようと考える場合に、現金を贈与して子供に購入させるか、または親が不動産を購入してそれを子供に贈与するか、一見どちらも変わらない取引に見えますが実はこの取引には大きな違いがあります。今回はこの取引の違いや注意点について考えていきます。

まずは、単純に現金を贈与する場合と不動産を贈与する場合のそれぞれの贈与税の課税価額の違いについてです。
それぞれの評価方法は
① 現金・・・額面
② 不動産(土地)・・・路線価または固定資産税評価×倍率
③ 不動産(建物)・・・固定資産税評価額
土地の贈与税の課税価額は時価の約80%といわれています。また、固定資産税評価額については70%以下となる場合もあります。したがって、例えば現金1億円を贈与した場合には、その1億円が全額課税対象となるのに対し、不動産を贈与した場合には、その70~80%の評価で課税されることとなるのです。

これだけ聞くと不動産のほうが有利!となるわけですが、不動産贈与をする場合には、いくつか注意しなければなりません。

1つめは贈与税の納税資金です。現金を1億円贈与された場合には、その1億円の中から贈与税を支払うことができます。しかし、不動産を贈与された場合には、それに対する贈与税は自身で負担することとなりますから、納税資金をどうするかについては考えておかなければなりません。

2つめは諸費用です。不動産を購入した場合には、贈与税のほかに不動産取得税や登録免許税(それに係る手数料)がかかってきます。現金の贈与を受け、その現金で不動産を購入した場合には、これらの諸費用は1回ですみます。しかし、不動産の贈与を受けた場合には、購入したときに1回、贈与したときに1回と計2回これらの諸費用がかかってしまいます。軽減される贈与税とこれらの諸費用のバランスも考えなくてはなりません。

3つめは特別控除などの特例との関係です。特に住宅などに関し贈与を受ける場合には、いくつかの特例が設けられています。例えば、第7回のコラム「住宅取得資金の贈与」を適用する場合には、現金の贈与をうけ、その現金で受贈者が不動産を購入等する必要があります。この特例はあくまでも住宅を取得するための資金に限られているからです。
また、第4回の「贈与税の配偶者控除」については、不動産を贈与しても、現金を贈与して購入等しても他の要件を満たしていれば適用ができます。
このように、住宅等の特例を受ける場合にはそれぞれの要件が異なりますので、確認をする必要があります。

これらの注意点を意識しつつ、上手に不動産等の移転を図っていくことも相続対策のひとつです。

現金贈与の注意点 「知って得する贈与税 第8回」

 財産をもらった時の課税関係については、あげる側、もらう側について色々なケースが想定されますが、考え方の基本は個人が個人から貰ったら贈与税が課税され、個人が法人から貰ったら所得税(一時所得)が課税されます。
 今回は一番多いと思われる親から子への現金贈与についてお話したいと思います。

 親から子へ現金を贈与した場合、贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」がありますが、相続時精算課税は選択をして初めて適用できる方法になりますので、今回は通常の贈与である暦年贈与に絞って話を進めていきます。
 最初に述べた原則的な課税の考え方にのっとりますと、親が子供の生活費や学費を出した場合、資金を出してもらった子供の立場からみれば「個人(親)からお金を貰った」ことになるため贈与税が課税されることになります。
 しかし親が子供の学費を負担するようなことにまで課税することはふさわしくないので、夫婦や親子などの扶養義務者の間で生活費や学費などの費用に充てるために行われる贈与は贈与税が非課税とされていて税金はかかりません。このため子供が毎年贈与税の申告をして納税するというようなことが起こらないのです。
 ただし非課税とされているのは、扶養義務者として当然に負担すべき範囲の金銭になりますので、子供が親から貰ったお金を学費等に充てずに、投資や不動産の購入などの別の目的に使っている場合は贈与税が課税されることになりますので注意が必要です。
 贈与税が課税されることとなった場合、贈与税は財産をもらった人、つまり子供に納税義務があります。贈与税は110万円の基礎控除がありますので、1年間にもらった現金が110万円以下であれば贈与税はかからず申告も必要ありません。
 110万円の範囲内で毎年コツコツと現金を贈与していけば、税金の負担なしにかなりの金額を子供に渡すことができます。

 この時に面倒でも守っていただきたいことは
①贈与契約書の作成
②手渡しで現金を渡さずに銀行口座を使って子供の口座に現金を振り込む
の2点です。
 贈与契約書はお互いが「現金をあげます」「現金をもらいます」という認識を持って行われた行為であることを証明するために必要です。契約書が無いと贈与の事実が否定され、親に相続が起こった際に親の財産として相続税の課税財産に取り込まれる可能性もあります。また、銀行口座を利用するのは贈与した金額を明確に残すためです。
 よって、110万円をわずかに超える現金を贈与して贈与税の申告をするというのもひとつの方法になります。 

 また、贈与ではなく貸付という形で親から子供にお金を渡すこともあります。この場合は借り入れた子供の返済能力や返済状況からみて金銭の貸借であると認められるのであれば、借入金に贈与税は課税されませんが、ある時払いの催促なしや返済能力のない子供への貸付のような『借入の形をとっただけで実態は贈与』と認められる場合は借入金に贈与税が課税されます。
贈与の認定を受けないためには、親子間であっても「金銭消費貸借契約書」を作成して、書面で贈与ではなく貸借であるという事実を残しましょう。また、無利息だと利息部分が親から子供への贈与とされることもありますので、多少の借入利息も上乗せした返済計画表を作成してその計画表に従って返済するようにするとなおよいでしょう。返済は直接現金で手渡しするのではなく、返した事実が残るように銀行口座を使うようにしましょう。
 親子の間でお金のやりとりする際に「税金」のことはなかなか意識に上らないかもしれませんが、税金を意識して、後に思わぬ贈与税が課税されないようにしてください。

贈与税の基本的なしくみについては前回まででひと通りご説明しました。
今回からは応用編に入ります。応用編の初回は「住宅取得資金の贈与」というテーマでお届けします。住宅取得資金の贈与については贈与税が優遇される特例があるのです。

≪住宅取得資金の贈与税の特例の概要≫
住宅取得資金の贈与については現在3つの優遇制度があります。
① 相続時精算課税制度の特例
住宅取得資金の贈与については、相続時精算課税制度の適用要件の一つである贈与者の年齢要件が緩和されるという特例があります。具体的には65歳未満の親からの贈与についても相続時精算課税制度が適用できることになります(一般の相続時精算課税制度は65歳以上の親から20歳以上の子供への贈与に適用される制度です)。
なお、平成21年12月31日までの贈与については、年齢要件の緩和に加え、非課税枠が1,000万円上乗せされ、3,500万円となる特例がありましたが、残念ながらこの特例の適用期間は終了しております。ただ、下記②③の特例との併用が可能であるため、一定の要件を満たせば、相続時精算課税制度を適用して平成22年であれば4,000万円まで、平成23年であれば3,500万円までの贈与が非課税となります。 

② 21年6月に可決した追加経済対策としての税制改正による特例
平成21年1月1日から平成22年12月31日までに20歳以上の人が直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合、500万円までの贈与が非課税になります。この特例は暦年贈与課税制度、相続時精算課税制度のどちらでも適用を受けることができます。

③ 平成22年度税制改正による特例
平成22年1月1日から平成23年12月31日までの間に直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、平成22年については1,500万円、平成23年については1,000万円までが非課税となります。この特例は②の特例が拡大されたものと言えます。
ただし、この特例を適用するにあたって注意すべき点は、贈与を受ける側に所得制限があることです。すなわち、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であることが適用要件の一つになっているということです。

≪住宅取得資金の贈与を受ける場合の注意点≫
住宅取得資金の贈与を受ける場合にあたっての注意点をいくつか挙げてみました。
・ ②③の特例で定められている非課税限度額は、もらう人単位での金額になります。例えば、所得金額500万円の人が平成22年に父親から1,500万円、祖父から1,500万円の住宅取得資金の贈与を受けた場合、非課税額は1,610万円(1,500万円+110万円:暦年贈与課税を前提としております)となり、残りの1,390万円に贈与税が課税されます。あげる人単位ではないことに注意して下さい。
・ 相続時精算課税制度の適用は、贈与税を一定の限度額までは非課税、限度額を超えても低率に抑える効果がありますが、贈与財産が相続時に持ち戻されて相続税の課税対象に含まれてきますので、相続財産が多額になる見込みの方にとっては相続税対策としての効果は期待できない場合があるので注意が必要です。
しかし、②③の特例の非課税枠については、将来の相続税を計算する際にも持ち戻されることがありませんので、完全な非課税枠と言えます。
・ 相続時精算課税制度を相続税対策として利用する場合には、将来の価値の値上がりが確実と思われる財産を移転させるのでなければ意味がありません。しかし"住宅取得資金の贈与"は現金の贈与であり、現金については将来の価値の値上がりは考えられません。この点についても注意が必要です。
・ ②③の特例は相続時精算課税制度を選択している場合にも適用を受けることができますが、相続時精算課税制度は原則として親から子への贈与を前提としています。したがって、祖父母から孫への住宅取得資金の贈与について②③の特例を受ける場合には相続時精算課税制度と組み合わせて適用させることはできません。
・ 最後に、「住宅ローンの返済に充てるために受ける現金贈与について、住宅取得資金の贈与の特例が適用できますか?」という質問をよく受けますが、このような現金贈与については住宅取得資金の贈与にはあたりませんのでご注意下さい。

それぞれの特例の適用要件等について末尾にまとめましたので、住宅取得資金の贈与をお考えの方はご参照下さい。
≪適用要件≫
① 相続時精算課税制度の適用要件は第5回目のコラムで紹介しているのでご参照下さい。
② 贈与期間:平成21年1月1日から平成22年12月31日まで
受贈者:贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上のもの
贈与者:直系尊属
住宅取得資金:住宅の新築、取得、増改築等の対価に充てる資金
居住要件:贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得等に充て、かつ、その
住宅に居住する。もしくは、同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれ
ること。
申告要件:贈与を受けた年の翌年3月15日までに必要書類を添付の上、贈与税の
申告書を提出する。
③ ②の特例が拡大されたものなので②の特例と異なる部分のみ取り上げます。
贈与期間:平成22年1月1日から平成23年12月31日まで
  所得制限:受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であること

前回のコラムで、相続時精算課税制度の内容についてはご理解いただいたかと思います。では、今回は相続時精算課税制度を選択することによるメリットとデメリットについてふれてみたいと思います。

<メリット>
(1)将来相続税がかからない方は、早期に財産移転ができる
相続発生時に相続時精算課税制度による生前贈与分を加算しても相続税がかからないことが予想されるのであれば、子供に多額の生前贈与をしても、結果的に税負担はありません。もちろん、贈与財産の価額が2,500万円を超えれば贈与税を納めなければなりませんが、相続時に申告書を提出することにより納めた贈与税は全額還付されますので、結果的に税負担なしに生前贈与ができるというわけです。
このような方につきましては、相続発生時まで待たずに、親から子供への財産移転を早い段階から積極的に行っていただいてよろしいかと思います。

(2)一度に大型贈与がしやすい
 相続時精算課税制度では2,500万円までは贈与税がかかりません。また、2,500万円を超えた金額に対しても一律20%の贈与税がかかるだけです。
たとえば、2,500万円の贈与を受けた場合、暦年課税制度では贈与税額が970万円となりますが、相続時精算課税制度では贈与税額は0円になります。
これにより、一度に大型の贈与がしやすくなります。

(3)収益物件の贈与により、相続財産の増加を防ぐことができる
 アパートなどの収益物件は、賃貸収入が入ってくるため、その分相続財産が積みあがっていくことになります。早期にアパートを子供に贈与してしまえば、贈与後はその賃貸収入は子供のものとなりますので、相続財産の増加を防ぐことができます。
 ただし、大型の修繕を予定しているような物件については、修繕をして少し待ってから贈与をされた方がいいかと思います。

(4)将来価値の上昇する財産の贈与により、評価額を低くおさえることができる
 相続財産に持ち戻される贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。そのため、土地、自社株、株式公開直前の株式など将来値上がりしそうな財産を贈与し、財産の価額を贈与時の価額で固定化することで、相続財産の評価額を低くおさえることができます。

(5)生前の財産分割、事業承継ができる
 実際に相続が発生すると遺産分割で紛糾するケースは多数見受けられますが、相続時精算課税制度を活用すれば、事前に一部の子供に財産を贈与し、その代わりとして遺留分の放棄をしてもらい、残った子に残りの財産を遺言で相続させるようなこともおこないやすくなります。
 また、以前は、会社の後継者が決まっていても、その後継者に自社株や会長所有の本社敷地などの会社の事業継続に必要な財産を確実に引き継げるかどうかは、いざ、相続が発生してみないとわかりませんでした。このような場合も、生前贈与と遺留分の放棄、遺言を組み合わせることで対応がしやすくなります。

<デメリット>
(1)暦年課税制度には戻れない
いったん相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者については従来からある暦年課税制度には戻れなくなります。よって、110万円(暦年課税制度の基礎控除額)以下で贈与を行ったとしても、必ず贈与税の申告が必要になります(2,500万円の非課税枠を使い切っていれば20%の贈与税も納めなければなりません)し、相続発生時にはその贈与財産は相続財産に持ち戻されることになります。

(2)相続財産を減らすことはできない
相続時には、贈与財産(相続時精算課税適用財産)は、相続財産に持ち戻されますので、上記メリットで書きましたように評価額を下げることはできますが、基本的に相続財産自体を減らすことはできません。よって、最終的に同額の贈与をするのであれば、暦年課税制度による贈与をコツコツした方が、結果的に相続税は安くなります。

(3)小規模宅地等の特例の適用を受けることができない
相続時精算課税制度を利用して贈与する財産については、小規模宅地等の特例の適用を受けることができませんので、贈与する土地の選択に際しては十分な検討が必要です。

(4)今後、相続税の大改正があった場合、逆に不利になる可能性もある
近い将来、相続税の大改正があるといわれています。大改正があった場合、将来相続税がかからないと見込んで相続時精算課税制度を利用したのに、実際は相続税がかかってしまうという人もたくさんでてくることが想定されます。救済措置が設けられる可能性もあるかとは思いますが、現行ではメリットがあったとしても改正内容によっては逆に不利になることもあります。

 一般的に贈与税といえば、一人当たり年間110万円の基礎控除があり、基礎控除を超える贈与があった場合には申告と納税が発生する、というイメージがあるかと思います。確かに実際その通りで、110万円の基礎控除を使って贈与税を計算する方法を暦年課税制度といい、こちらが原則的な方法です。暦年課税制度では、超過累進税率により贈与税を計算するため、同じ年に多額の贈与があった場合にはより高い贈与税がかかることになります。また、基礎控除110万円の範囲内で現金を毎年贈与する、というのは有名な相続税対策といえるでしょう。
 

 贈与税の計算方法には、もう一つ相続時精算課税制度という方法があります。こちらは暦年課税との選択適用となり、贈与税の申告期限までに相続時精算課税選択届出書を提出することにより選択することができます。ただし一度精算課税制度を選択すると、暦年課税制度に戻れなくなりますので、選択する際は慎重に検討しなければなりません。

相続時精算課税制度の概要をまとめると下記の通りとなります。

適用対象者 贈与者は満65歳以上の親
受贈者は満20歳以上の子(養子を含みます。)
※ 住宅取得等資金の贈与の場合には、親の年齢制限はなくなります。
適用を受けるための手続き 贈与税の申告期限(翌年3月15日)までに税務署に届出書を提出します。
一度、届出書を提出して相続時精算課税制度を選択したら、取消をすることができません。
他の者から贈与があった場合 相続時精算課税制度の選択は、親-子「1対1」ごとに選択をします。従って、父からの贈与についてのみ相続時精算課税制度を選択した子は、母・祖父母・その他の者から贈与を受けた場合には、暦年課税制度(年110万円まで非課税)の適用を受けることになります。なお、この制度の選択権は子供のほうにあります。
贈与税の計算方法 贈与を受けた財産価額の累計額が非課税枠を超えた場合、超える部分の金額について一律20%が課税されます。
なお、贈与の回数・年数・財産の種類には制限がありません。
相続税の計算方法 贈与をした親に相続が発生した場合には、相続時精算課税制度を利用して贈与をした財産の全てが遺産に持ち戻され、相続税が計算されます。なお、既に支払った贈与税は「前払い」として相続税額から差し引くことができます。

 

暦年課税制度と相続時精算課税制度の比較

  暦年課税制度 相続時精算課税制度
非課税枠 110万円 2,500万円
適用対象者 制限なし 贈与者は満65歳以上の親
受贈者は満20歳以上の子(養子を含みます。)
※ 住宅取得等資金の贈与の場合には、
親の年齢制限はなくなります。
申告 贈与税額がある場合には申告が必要 必ず届出及び申告が必要
税率 10%~50%(超過累進税率) 一律20%
相続税との関係 贈与後3年経過すれば、贈与財産は
相続財産とは切り離されます。
相続発生時には贈与財産は全て相続財産に
持ち戻して相続税が計算されます。

 

 贈与税には、上記の内容のほかに、住宅取得等資金の贈与の場合の優遇措置がありますが、こちらは今後のブログに掲載される予定となっております。

 では、この相続時精算課税制度はどのような方が選択するとよいのでしょうか。
たとえば、贈与者に相続が発生する場合に、相続税がかからないような方については、精算課税を選択してもよろしいかと思います。なぜかというと、将来の相続発生時に贈与財産が持ち戻されたとしても相続税がかからないのであれば、非課税枠の大きい精算課税で一度に多額の財産を生前から贈与できますよね。

 その他、収益物件(たとえば賃貸用のアパート)も精算課税を使って贈与してもよいと思います。なぜなら、収益物件は持っているだけで収入が入り、それが現金という形で手許に残ります。これが将来相続税のかかるような方であれば、収入が入るたびに相続財産が増えていくことになります。しかし、これを子供に贈与しておけば、子供に家賃収入が入ることになり、将来の相続税の納税資金を確保できるほか、所得分散を図ることもできるので、まさに一石二鳥といえるでしょう。

贈与税の配偶者控除 「知って得する贈与税 第4回」

配偶者間の贈与については、①贈与の認識が概して希薄であること、②夫の死亡後の妻の生活保障の意図で行われることなどの理由から、贈与税の負担を軽減させる特例的な取扱い(贈与税の配偶者控除)が設けられています。
 婚姻期間が20年以上である配偶者からの居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与については、下記の一定の要件を満たす場合に限り、贈与税の課税価格から最大2,000万円を配偶者控除として控除することができます。
 結婚20年目のプレゼントに、居住用不動産を贈与してみてはいかがでしょうか?

 <適用要件>
① 婚姻期間が20年以上であること
・婚姻の届出の日から居住用不動産の贈与の日までの期間で判断します。
・1年未満の端数は、切り上げされません。
・同一配偶者間では一生に一回しか適用できません。
② 居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること
③ 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住用不動産に居住し、その後も引き続き居住する見込みであること

<贈与税の計算方法>
〔その年分の贈与税の課税価格―贈与税の配偶者控除※―110万円〕×税率=贈与税額
※次のいずれかの少ない金額
・2,000万円
・居住用不動産の価額+居住用不動産の取得に充てられた金銭の額

<具体例>
  太郎さんは、結婚20年目に奥さんの花子さんに現在居住している建物2,500万円を贈与しました。贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けるつもりです。贈与税はいくらですか?
⇒2,500万円のうち配偶者控除2,000万円及び基礎控除110万円に係る部分については贈与税は課税されません。残額の390万円に課税されます。
〔2,500万円-2,000万円-110万円〕×20%(税率)-25万(控除額)=53万円

<申告の手続き>
  贈与税の配偶者控除の特例は、申告書を提出することが要件となっております。したがって、贈与税の課税価格が2,110万円以下で贈与税がかからない場合であっても、贈与を受けた翌年の3月15日までに贈与税の申告書を所轄税務署に提出しなければなりません。その際には、戸籍謄本などの一定の書類の添付が必要となってきます。

<その他>
なお、居住用不動産を贈与により取得した場合には、贈与税以外にも下記の税金がかかりますのでご注意下さい。
・不動産取得税
不動産の固定資産税評価額×3%
※一定の要件を満たす不動産については軽減の特例があります。
・登録免許税
不動産の固定資産税評価額×2%

その他詳細はお気軽にご相談下さい。

暦年単位課税とは「知って得する贈与税(第3回)」

 贈与税の課税体系には、暦年単位課税と相続時精算課税の2つがありますが、今回は暦年単位課税についてご説明致します。

 暦年単位課税とは1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額に贈与税を課税する方法です。
 ただ、財産の贈与を受けた人全員に贈与税がかかるかというとそういうわけではありません。贈与税には110万円の基礎控除額というものがあり、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下の時は、贈与税がかからないこととなっています。
 しかし、110万円の基礎控除額を超える財産の贈与を受けた場合には、贈与税がかかります。贈与税の計算式は以下のとおりです。

(1年間に贈与により受けた財産の合計額 ― 110万円)× 税率 = 贈与税額

 税率は累進税率となっており、贈与を受けた財産の額が多くなるほど、税率も上がる仕組みとなっています。贈与税を計算するときは以下の速算表を用います。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超  300万円以下 15% 10万円
300万円超  400万円以下 20% 25万円
400万円超  600万円以下 30% 65万円
600万円超 1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円

(具体例)
 Aさんは、平成21年の5月2日に父親から現金500万円、同年10月15日に母親から現金200万円の贈与を受けました。

    H21                H21                   H21             H21      H22             H22 
     1/1               5/2                  10/15            12/31     2/1             3/15
             
         
 
    父親から             母親から   
   現金500万円        現金200万円 
申告期間

Aさんの平成22年分の贈与税を計算すると以下のようになります。
① 贈与を受けた財産の合計額
500万円 + 200万円 = 700万円

② 贈与税額の計算
(700万円 - 110万円) × 30% - 65万円 = 112万円

 なお、平成21年分の贈与税の申告期間は平成22年2月1日から3月15日までとなっておりますので、申告をお忘れにならないようご注意ください。