相続により取得した上場株式を売却するときの注意点

 相続により取得した財産のうちに上場株式がある場合には、そのまま継続して所有し続ける方も、株価の変動をにらみつつ適当な時期に売却して換金する方もあるでしょう。現在売却を検討している方、また、しばらく売る気はないが将来的には売却する可能性がある方は、売却時期により譲渡所得税が異なることとなりますので、次の「3つの期限」について留意してください。
1.相続税を経費にする~相続開始日から3年10ヶ月以内
 相続により取得した財産について相続税が課税された方については、相続開始日から3年10ヶ月以内にその財産を売却したときは、譲渡所得税の計算上相続税を経費にすることができます。
(例) その上場株式を売却したときの売却価格 1,000
    被相続人がその上場株式を購入したときの価額 100
    課税された相続税のうち売却した上場株式に対応する部分 200

→ 3年10ヶ月以内に売却した場合の譲渡所得税
   (売却価格1,000-取得費100-相続税200)×20%=140
  3年10ヶ月を越えて売却した場合の譲渡所得税
   (売却価格1,000-取得費100)×20%=180

2.みなし取得費を使う~平成22年12月31日まで
 平成13年9月30日以前から所有していた上場株式を、平成22年12月31日までに売却(特定口座での売却を除く)した場合には、実際の取得費に代えて「みなし取得費」を使うことができます。
 「みなし取得費」とは、平成13年10月1日におけるその上場株式の終値の80%相当額をいい、実際にその上場株式を購入した価額(実際の取得費)よりもこの「みなし取得費」の方が高い場合には、「みなし取得費」を使ったほうが、譲渡所得税が有利になるといえます。
 なお、相続開始日が平成13年10月1日以後であっても、相続人は被相続人の取得日を引き継ぎますので、被相続人がその株式を購入した日が平成13年9月30日以前であれば、相続人が「みなし取得費」を選択することが可能です。

3.優遇税率10%の適用を受ける~平成20年12月31日まで
 平成20年12月31日までに証券取引所を通じて上場株式を売却した場合には、譲渡所得税の税率が10%に優遇されていますが、この期限を過ぎると20%の原則税率が適用されますので注意が必要です。ただし、平成21年1月1日~平成22年12月31日までの2年間については経過措置が設けられており、1年あたりの譲渡益が500万円までであれば優遇税率10%が適用されますが、それを超える譲渡益については20%の原則税率が適用されることとなります。つまり、譲渡益について制限なしで10%の優遇税率が適用されるのは、今年いっぱいということになります。

 以上のとおり、相続により取得した財産が現金以外のもの、つまり、不動産や上場株式等の場合には、相続税だけではなくその財産を売却したときには譲渡所得税が課税される可能性があります。したがって、税負担を抑えたい場合には売却時期についてもしっかりと検討する必要があります。

事業承継税制は救世主となるか?

昨年12月半ばに公表された「平成20年度税制改正大綱」において、かねてから要望の高かった事業承継税制が整備されることが明記されました。「これで事業承継対策はいらなくなった!」と喜んでいるオーナー様もいらっしゃるかもしれませんが、果たして手放しで喜べる税制なのだろうか、というのが私達実務家の現時点における見解です。以下、新しい事業承継税制の注意点をまとめましたのでご参考ください。

1.相続税の「減額」ではなく、「納税猶予」であること
 新聞報道等において、「相続税の80%が減額になる」と誤記されているケースもあるぐらいですから、今回の税制改正を「相続税の減額」と誤認している方も多いようです。
 残念ながら、新しい事業承継税制は「相続税の減額」ではなく「相続税の納税猶予」であり、適用要件を満たさなくなった場合には、相続税に利子税を併せて納付しなければなりません。オーナー様は、後継者様に事業や債務保証だけでなく、相続税という潜在的な債務も承継させることになりますので、後継者選びの意思決定には「決死の覚悟」が必要になるといえます。

2.対象となる後継者は1人であること
 新しい事業承継税制の適用が受けられるのは、1つの会社につき1人の後継者とされています。したがって、長男が代表取締役、二男が取締役営業部長、長女が取締役経理部長といったように家族が一丸となって事業を行っている場合であっても、特例の適用を受けられるのは長男のみということになります。

3.対象となる非上場株式は、後継者の持分3分の2までであること
 80%の納税猶予の対象となるのは発行済議決権株式総数の3分の2までですから、3分の2×80%=53.3%が納税猶予の対象ということになります。つまり、「80%の納税猶予」とはいうものの、結果として納税猶予の対象になるのは「相続税のおよそ半額」に限定されてしまいます。
 また、3分の2までというのは「相続等の結果、後継者の持分が3分の2まで」ということですので、父が3分の2、長男が3分の1を出資して設立していた場合には、父の相続財産である非上場株式については、納税猶予の対象は「3分の1」に限定されてしまうことになります。

 このようなことから考えると、新しい事業承継税制の適用にあたっては慎重な判断が必要といえます。また、適用を受ける方針となった場合であっても、適用要件が厳しく定義されているため事前に十分な要件整備を行っていなければ、いざというときに適用が受けられないということもありえます。
 事業承継税制に興味のあるオーナー様、早い時期にぜひとも弊社にご相談ください。

離婚による財産分与と税金

報道によれば、平成18年は平成17年と比較して離婚件数が減少したそうです。これは、平成19年4月1日から始まる「離婚時の厚生年金の分割制度」を待ってのことで、平成19年は離婚件数が増加に転じるのではないかという予測もあるようです。
離婚に関しては、夫婦で形成してきた財産をどのように分けるのか、というのが大きな問題になってくると思われます。
離婚による財産分与については、贈与により取得した財産とはならないため原則として贈与税は課税されません。ただし、財産分与を受けた額が不当に多すぎると認められる場合や、離婚を手段として課税逃れを図ろうとしたものであるときは、たとえ名目上は財産分与であっても、贈与により取得した財産として贈与税が課税されることになります。
それでは、合理的な財産分与については課税が全く生じないかというと、そういうわけではありません。離婚に伴って分与された財産が、土地建物など譲渡所得の起因となる資産である場合には、財産を分与した人が、分与した時の時価により、その土地建物を譲渡したものとして、譲渡所得税が課税されることになります。ただし、分与された財産がマイホームである場合において一定の要件を満たすときは、マイホームを売却したときと同様に譲渡益から3,000万円を控除することが認められています。
なお、この3,000万円特別控除の特例の適用要件として、「売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと」とされていますので、離婚前に財産分与を実行した場合にはこの特例の適用が受けられません。つまり、離婚後に「配偶者」でなくなってから財産分与を実行した場合にのみ、特例の適用が受けられるということになります。
さらに、「住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること」という要件その他一定の要件がありますので、財産分与を行う時期等については十分注意する必要があります。

団信と相続税

 団信とは「団体信用生命保険」の略称で、住宅ローンの債務者が加入する生命保険です。具体的には、住宅ローンを貸した金融機関が契約者・受取人となり、住宅ローンを借りた債務者が被保険者となるもので、ローン返済期間中に債務者が死亡または高度障害になった場合には保険会社が残債の額に相当する保険金を金融機関に支払います。したがって、債務者の相続人はその後のローンを支払わなくてよいということになります。

 通常、銀行ローンの場合には、保険料を銀行が負担する形で団信への加入が強制されていますが、この場合、保険料はタダではなく金利に上乗せされていることになります。なお、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)による融資の場合は任意加入となっており、金利とは別に、保険料に相当する「特約料」を1年ごとに支払う仕組みとなっています。
さて、この団信について、相続税の課税関係はどうなるのでしょうか。この場合には、①死亡保険金として相続税の課税対象となるのか、②住宅ローンの残債は債務控除できるのか、の2点が疑問となるところです。

 まず①ですが、団信は契約者および受取人が金融機関となりますので、たとえ被保険者(債務者)の死亡により支払われるものであっても、その死亡保険金は相続税のみなし相続財産とはなりません。次に②ですが、過去の判例で「団信の保険金により補填されることが確実である住宅ローンの残債は相続人が支払うべきものではなく『確実な債務』にはあたらない」として、債務控除は受けられないという取扱いになっています。したがって、団信付きの住宅ローンでマイホーム(土地・建物)を取得し、完済する前に相続が開始した場合には、その被相続人の遺産はマイホーム(土地・建物)のみとなります。
団信については、みなし相続財産も債務控除もないということになりますので、相続税の観点からするとプラスマイナスゼロで損はないように思われますが、もし、被相続人が団信ではなく通常の生命保険に、ローン残債と同額を死亡保険金として契約していたらどうなるでしょうか。この場合には、死亡保険金がみなし相続財産となるのに対し、ローン残債は債務控除がとれますのでやはりプラスマイナスゼロのように思われます。ところが、この場合にはみなし相続財産としての生命保険金について、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えますので、団信と比較するとその分相続財産が減ることになります。

親からもらったお金には税金がかかるのか

 「誰かから何かをもらったら贈与税がかかる」ということは、皆さんなんとなく理解していることだと思います。ところが、その「誰か」が親だったら・・・。たとえば、生活費や学費の仕送り、入学祝い、車やマイホーム資金の援助など。このお金には、贈与税がかかるのでしょうか。
 
 親からもらう生活費や教育費も、法律行為としては贈与に該当します。では、生活費や教育費にも贈与税がかかるかというと、「扶養義務者からもらう生活費または教育費のうち通常必要と認められるもの」については贈与税の非課税とされていますので、贈与税はかかりません。ただし、この生活費や教育費は必要な都度その支払いに直接充てることが原則とされていますので、たとえば4年分の教育費として一括で受け取っておき、その金額を貯蓄したり投資資金や資産の購入費用に充当したりした場合には、非課税とはなりません。
 
 また、入学祝いについても、「香典や年末年始の贈答、祝物またはお見舞いのための金品であって、社会通念上相当と認められるもの」に該当するものであれば、贈与税を課税しないものとして取り扱われています。

 それでは、車やマイホームなどの資産を購入する場合に親から貰ったお金はどうなるのでしょうか。このお金については、贈与税の非課税として規定されていないので、原則どおり贈与税が課税されることになります。ただし、車やマイホーム購入に際し親から援助を受けた金額が、贈与を受けたのではなく「親ローン」として借りたのだということでその後きちんと返済をしていれば、贈与税の対象とはなりません。
 
 ここで、贈与税の納税が発生しないように「親ローン」の形式をとっておき、その後子が返済しなかった場合にはどうなるのでしょうか。この場合には、贈与をした親に相続が発生した場合に問題となってきます。

 「親ローン」は親の立場からいうと「債権」、つまりプラスの財産になりますので、その「親ローン債権」を相続した人に相続税がかかるということになります。つまり、債務者である子が相続した場合には、借りたときには贈与税を払わずに済みましたが、相続により自分が「債務者かつ債権者」となって返済不要となった時点で、相続税を支払うことになるわけです。

 なお、そもそも「親ローン」の契約時点で「あるとき払いの催促なし」ということで当初から返済しないつもりであったにもかかわらず「親ローン」の形式を仮装していたに過ぎないと判断された場合には、当初契約時に贈与税を支払うべきであったとして贈与税のほか延滞税や加算税の支払いをしなければならない場合もありますので、注意が必要です。