今までの自分を見つめ直す
「自分に万一のときが来たら・・・」ということは考えたくないものです。ましてやまだ若い方はこれからも楽しむべき人生がたくさんあり、今の自分には関係のないことだと思われるかも知れません。しかし、そのときは必ずやってきます。その瞬間に家族へあなたの想いのすべてを伝えることができるでしょうか?
「事故」が原因であれば、それを伝える時間もありません。
「病気」が原因であれば、"万が一のとき"が来ることを知らされず、家族に想いを伝える時間がないかも知れません。
「認知症」となったら、伝えるべきことすら覚えていないかも知れません。
時間があったとしても、これまで生きてきたあなたの人生はすぐにご家族へ伝えることができるほど、整理できているでしょうか?
具体的には、自分の氏名はもちろん、学歴・職歴、家族、交友関係(友人・知人・万一の時に知らせたい人)、葬儀社、菩提寺、弁護士、税理士、書類の保管場所、財産目録、語り継いで欲しい大切な思い出、守ってほしいこと、感謝の言葉、今だから言えること、戒名、さらには尊厳死、その他伝えたいことなどを手帳やノートに整理します。そうするときっと家族に伝えたいことが整理され、今後の人生を生きていくための教訓や新たな目標が見えてくることと思います。
遺言はあっても邪魔にならない、でもなくては困る
「私の家族は仲がよいから遺言書などなくても大丈夫」-悲しいことですが、その想いとは裏腹に、生前仲の良かった家族が自分の残した遺産を巡って骨肉の争いを始めてしまうことがよくあります。相続がおきると相続人それぞれ千差万別です。それぞれに想いがあり、思い出があり、問題があり、また家族もいます。「うちに限って争いは生じないから平気」ではなく、「万一何が起こっても平気」というスタンスで準備をすすめることが重要になってきます。そしてその準備の手助けになるのが遺言という伝達手段です。遺言は、自分の遺産の処分を、妻・子どもなど残された人に伝え、その実現を図ろうとするものです。また、家族に対する考えや想いなど、意思としても残すことができます。ぜひ自分を見つめ直すのと同時に、遺言書を残すことをおすすめします。
遺言書の作成においてポイントとなるのは次の4点です。
①適法な遺言
遺言は適法に作成しないと法律上有効にならず、蓋を開けてみるとその実現を図ることができないという事態にもなりかねませんので、きちんとした手続きを踏み作成する必要があります。遺言には、一般的に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの方式が多く用いられています。自筆証書の場合、公証人や証人を必要としないことから簡便なようですが、不備(署名・捺印もれ、紛失、遺産が特定できないなど)があれば無効になることがあります。より確実性を期すためには、公証役場に保管され、より安全確実な公正証書の作成をおすすめします。
②遺留分を考慮した遺言
遺留分とは、遺言の内容にかかわらず、法律で相続人が最低限取得できる割合を保障するものです。遺留分を侵害する遺言ですと、遺留分を有する相続人が、遺留分に対する不足分の取戻しを請求(遺留分減殺請求)することができます。
遺産争いを生じさせないために作成したのにもかかわらず、減殺請求が生じては元も子もありません。遺留分を考慮した遺言を作成する必要があります。
③相続税を考慮した遺言
これには、次の2点があります。
(イ)税法上の有利な特典を活かしているか
相続税は遺産分割の工夫によって特典の適用の可否が変わってくるので、納めるべき税金も大きく変わってくることがあります。
有利な特典とは、主に「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」があります。前者は配偶者が財産を取得した場合に一定割合までは非課税となる特典、後者は居住用や事業用の土地を相続した場合に要件次第で評価減される特典です。これらを最大限活用できるような遺言を作成する必要があります。
(ロ)納税を考慮した内容か
各相続人の納税についても考慮して遺言を作成するべきです。例えば妻には、今後の生活を考えて自宅と現金、子どもには、更地だけを分ける遺言書を作成した場合、相続がおきたとき子どもは相続税をすぐに納めることができません。このケースではあらかじめ納税額相当の現金を子どもに分ける遺言を作成するか、物納まで視野に入れて遺言を作成する必要がでてきます。
④何度でも書き直し可能
遺言のメリットの一つとして、何度でも書き直しが可能であるという点があります。
1度作成したからといってそのままにするのではなく、遺言は日付の新しいものが常に有効となるので、自分の意思が変わる都度書き直しをしても差し支えありません。
最後に、遺言で遺産を特定の子どもに多く取得させるのであれば、その理由は必ず書くべきであると思います。そうしないと「同じ子どもなのになぜ自分だけ少ないのか?」、「自分は可愛がられていなかったのでは?」など、逆に兄弟が不仲になってしまうケースがあるからです。例えば、「家と墓を守ってくれる長男に多めあげる。」、「不動産もあげるけど借金も背負ってもらうから多めにあげる。」など、遺言書の付言事項として記載するのがよいでしょう。

