代償分割

(1)代償分割とは?
 相続人が相続財産を分割する方法として、代償分割という方法があります。これは例えば、「長男がすべての遺産10億円を相続し、その代わりに長男が次男に代償金1億円を支払う」というように、特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える方法です。
相続する主な財産が、自宅・農地・その他事業用地などの不動産の場合、または自社株の場合など、分割が難しいケースに有効です。

(2)相続税の課税価格の計算
 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算については、次のとおりとなります。
 ①代償財産を交付した人(長男)の課税価格
   相続により取得した財産の価額 ― 交付した代償財産の価額=取得財産の価額
   [例] 10億円 - 1億円 = 9億円

 ②代償財産の交付を受けた人(次男)の課税価格
   交付を受けた代償財産の価額
   [例] 1億円

(3)代償分割と譲渡所得税
 代償分割によって財産を取得した相続人(長男)が現金で1億円を交付した場合
には、譲渡所得の課税問題は生じません。
ただし、現金でなく相続人固有の不動産(長男がもともと所有しいた不動産)で
代償財産を交付した場合には、所有権が移転したときに、その不動産の時価相当額の収入があったとして譲渡所得の課税が生じます。 
 これは、不動産を移転することにより、債務1億円が消滅するため、資産の有償譲渡があったことになるからです。
 代償財産の交付を金銭以外で行う場合にはどうぞ注意ください。

『相続税の税務調査』

国税庁の公表データ(直近3年間)によると、相続税申告書の提出は年間約45,000件あり、そのうち30%に相当する約14,000件に税務調査が行われています。さらに、このうち申告漏れが指摘された件数は約12,000件で、調査件数に占める申告漏れの割合は85%と非常に高い確率となっています。また、仮装・隠ぺい行為があったとして、重加算税が課せられた割合は調査件数に対して約15%となっています。
税務署の指摘事項について修正申告をした場合、増加した相続税以外に以下のような附帯税もかかりますので注意が必要です。

【延滞税】
・納期限の翌日から2か月を経過する日まで→年4.7%
     ※金融情勢により年ごとに変動する場合があります。
・納期限の翌日から2か月を経過した日以後→年14.6%

【加算税】①または②
①過少申告加算税
申告した税額が少なかった場合→10%または15%
②重加算税
「仮装・隠ぺい行為」による過少申告があった場合→35%

「仮装・隠ぺい行為」とは例えば次に掲げるような事実がある場合をいいます。
(1) 相続人等が、帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務をつくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を圧縮していること。
(3) 相続人等が、取引先その他の関係者と通謀してそれらの者の帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
(5) 相続人等が、その取得した課税財産について、例えば、被相続人の名義以外の名義、架空名義、無記名等であったこと若しくは遠隔地にあったこと又は架空の債務がつくられてあったこと等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。
(「相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについての事務運営指針」より)

相続・贈与により取得した上場株式


相続や贈与により取得した上場株式を皆様はどのように保管されていますでしょうか。
自宅や貸金庫等に保管する、いわゆるタンス株式になっていませんでしょうか。現在、株券電子化の準備がすすめられていますが、電子化実施後は株券そのものに価値はなくなります。相続や贈与により取得した上場株式は特に名義書換えが済んでいるか確認が必要です。一度、株式の保管状況を見直し、タンス株式は証券会社の特定口座への預け入れを検討されてはいかがでしょうか。タンス株式や証券会社の一般口座に預け入れている株式を、特定口座へ組み入れるためには、平成21年5月末までの手続きが必要ですので、どうぞご注意ください。
ここで、相続・贈与により取得した上場株式の売却時の取扱いと、特定口座における取得費についてご説明いたします。

(1)株式売却時の税金は?
株式を売却した場合、次の算式により税金を計算します。
   (売却金額-取得費-委託手数料等)×税率

相続や贈与により取得した株式を売却する場合は、特に取得費に注意が必要です。
この場合の取得費は相続や贈与を受けた時の評価額ではなく、被相続人や贈与者の
取得費を引き継ぎます。つまり、被相続人や贈与者の値上がり益も引き継ぐことになります。もし、取得費が不明の場合、売却金額の5%を取得費にできますが、残りの95%は売却益とみなされてしまいます。
なお、平成13年9月30日以前から引き続き所有していた株式については、みなし取得費(平成13年10月1日の終値の80%相当額)を取得費とすることができますが平成22年12月末までに売却した場合に適用をうけられます。

(2)特定口座へ預け入れる場合の取得費は?
特定口座とは、上場株式の売却益課税について、確定申告を簡略化したり、源泉徴収 
することによって確定申告を不要とする制度です。したがって、特定口座へ預け入れる際、取得費を明確にする必要があります。
平成16年12月末まではみなし取得費で特定口座に入庫することができましたが、残念ながら現在はできません。したがって、以下のような取扱いとなります。

① 取引報告書等により確認できる場合→報告書等に記載された取得金額     
② 名義書換日が確認できる場合→名義書換日の終値

※ 名義書換日は株券の裏書や、信託銀行で「株式異動明細」を取寄せることにより調べることができます。

被相続人の医療費

所得税の確定申告の受付が、もう間もなく始まります。皆さまご準備はすすんで
いらっしゃいますでしょうか。今回は、亡くなられた方の医療費の取り扱いについて
事例をご紹介いたします。

【質問】
 昨年、母が入院中に亡くなりました。
入院中にかかった医療費ですが、生前母が支払ったものと、死亡後私が
支払ったものがあります。
確定申告の医療費控除の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
 
【回答】
お母様が支払った医療費は、お母様の準確定申告で医療費控除をすることが
できます。
また、貴方が支払った医療費は、貴方がお母様と生計一の親族であれば、確定申告で医療費控除をすることができます。

【解説】
 相続があった場合の医療費控除は、支払時期・支払者によって取扱いが
異なります。詳細は以下のとおりです。

(1)相続開始までに支払った医療費
a)被相続人が支払った場合
→相続開始時までに支払った医療費は被相続人の準確定申告で
医療費控除の対象となります。
b)生計一の親族が支払った場合
→生計一親族の確定申告の際、医療費控除の対象となります。

(2)相続開始後に支払った医療費
a)生計一の親族が支払った場合
→生計一親族の確定申告の際、医療費控除の対象となります。
  医療費を相続財産から支払った場合でも控除の対象となります。
b) 生計別の親族が支払った場合
→生計別親族の確定申告の際、医療費控除の対象とすることは
できません。

※相続税の債務控除
相続開始後に相続人が支払った医療費は相続税の計算上
債務控除の対象となります。

相続した自社株の発行会社への譲渡

同族会社のオーナーに相続が発生し、相続人がその株式を取得した場合、
多額の相続税がかかり、納税資金に苦慮するケースがあります。
その場合に、発行会社に株式を買い取ってもらい、納税資金に充てる方法が
あります。税制上の優遇措置もありますのでここでご紹介します。
通常、個人株主が所有している自社株を、発行会社に買い取ってもらった場合、資本等の金額を超える部分の金額はみなし配当となり総合課税で課税されます。(最高で50%の税率で課税されます。)
 ところが、相続により取得した自社株を発行会社に譲渡した場合には、売却代金に対する譲渡所得課税となり、譲渡利益に対し20%の税率で課税されます。
また、一定期間内に株式を譲渡し、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」の適用が可能な場合には税負担がさらに軽くなります。
具体的には以下のように譲渡所得の計算をします。

譲渡所得=売却金額-(取得費+取得費加算額+譲渡費用)
                       ↓
         納付した相続税のうち売却株式に対応する部分

自社株は上場株式のように売却は容易ではありません。納税資金の準備として、発行会社への譲渡を選択肢の一つにしてはいかがでしょうか。
ただし、会社の買取価格の決定方法、買取り資金の準備、買取後の議決権の問題等、留意点がいくつかありますので、検討の際にはぜひご相談ください。