不動産贈与の注意点「知って得する贈与税 第9回」

子供に不動産を購入してあげようと考える場合に、現金を贈与して子供に購入させるか、または親が不動産を購入してそれを子供に贈与するか、一見どちらも変わらない取引に見えますが実はこの取引には大きな違いがあります。今回はこの取引の違いや注意点について考えていきます。

まずは、単純に現金を贈与する場合と不動産を贈与する場合のそれぞれの贈与税の課税価額の違いについてです。
それぞれの評価方法は
① 現金・・・額面
② 不動産(土地)・・・路線価または固定資産税評価×倍率
③ 不動産(建物)・・・固定資産税評価額
土地の贈与税の課税価額は時価の約80%といわれています。また、固定資産税評価額については70%以下となる場合もあります。したがって、例えば現金1億円を贈与した場合には、その1億円が全額課税対象となるのに対し、不動産を贈与した場合には、その70~80%の評価で課税されることとなるのです。

これだけ聞くと不動産のほうが有利!となるわけですが、不動産贈与をする場合には、いくつか注意しなければなりません。

1つめは贈与税の納税資金です。現金を1億円贈与された場合には、その1億円の中から贈与税を支払うことができます。しかし、不動産を贈与された場合には、それに対する贈与税は自身で負担することとなりますから、納税資金をどうするかについては考えておかなければなりません。

2つめは諸費用です。不動産を購入した場合には、贈与税のほかに不動産取得税や登録免許税(それに係る手数料)がかかってきます。現金の贈与を受け、その現金で不動産を購入した場合には、これらの諸費用は1回ですみます。しかし、不動産の贈与を受けた場合には、購入したときに1回、贈与したときに1回と計2回これらの諸費用がかかってしまいます。軽減される贈与税とこれらの諸費用のバランスも考えなくてはなりません。

3つめは特別控除などの特例との関係です。特に住宅などに関し贈与を受ける場合には、いくつかの特例が設けられています。例えば、第7回のコラム「住宅取得資金の贈与」を適用する場合には、現金の贈与をうけ、その現金で受贈者が不動産を購入等する必要があります。この特例はあくまでも住宅を取得するための資金に限られているからです。
また、第4回の「贈与税の配偶者控除」については、不動産を贈与しても、現金を贈与して購入等しても他の要件を満たしていれば適用ができます。
このように、住宅等の特例を受ける場合にはそれぞれの要件が異なりますので、確認をする必要があります。

これらの注意点を意識しつつ、上手に不動産等の移転を図っていくことも相続対策のひとつです。

相続のときこそ共有財産の見直しを

 お母様Aの相続が発生し、相続人はお子様BとCのお二人でした。既にお父様はお亡くなりになられていて、その相続の際にはBとCはともに協力してお父様の面倒をみていたのですべて法定相続分(1/4ずつ)により取得し、お母様以外が取得した不動産についてもAとBの共有により取得しております。その後Cは転勤等によりお母様やBとは段々と疎遠になっており、お母様の面倒はすべてBがされておりました。
 ここで問題となるのはお母様の財産の相続についてと、既にお父様の相続の際に共有持分となっている財産についてです。今回はこの共有持分についてお話いたします。
共有財産については親族の仲がうまくいっているときはいいですが、そうでない場合には問題となります。というのもこれを売却したい場合などは共有者全員の合意がなければ売却できないといった問題が生じてしまいます。また、そのまま共有で持ち続けることにより次世代またその次の世代へと移っていった場合にはなかなか話し合いができない状況ができてしまいます。
 したがって今回のように相続が発生したのを期に以前から共有となっていた財産を整理することにより、お互いの財産を明確にしていくことをお勧めいたします。
その方法としては、①どちらかに売却する、②共有不動産が複数ある場合には共有部分の不動産を交換することによりそれぞれ単有とする、③共有で売却してしまう・・・等、いずれにしろここで整理することで余計な親族間でのトラブルを回避することもできるものと思われます。
 また、この移転の際にはもちろん税金の問題も発生いたします。手段の中には譲渡の特例を利用し極力税額を抑えられるケースもあります。このようなお悩みをお持ちの方は是非弊社にご相談ください。

新事業承継税制の最新情報

平成20年度の税制改正大綱で新事業承継税制の骨子が公表されました。しかしながら要件等の詳細が未定のため適用を受けようか迷われている非上場会社のオーナー様も多くいらっしゃるかと思います。今回は平成20年10月1日より経営承継円滑化法の施行に伴い、この事業承継税制についても新たな情報が公表されましたのでご紹介させていただきます。

1、対象会社の範囲の拡大
 中小企業基本法における中小企業者とされていましたが、下記の業種については範囲が拡大されました。
・ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。)
・ソフトウェア、情報処理サービス業
・旅館業

2、対象外となる会社(資産管理会社等)の明確化
 対象外となる資産管理会社等について下記の法人が一部明確化されました。
・上場会社
・大企業、医療法人等の中小企業者に該当しない会社
・性風俗関連事業を行う会社
・実質的な子会社が上記3つの会社に該当する会社
・総収入金額がゼロ、従業員がゼロの会社
・総資産に占める「特定資産」(有価証券(実質的な子会社を除く)、不動産(自社利用の不動産を除く)、現預金、ゴルフ場会員権等)の合計額の割合が70%以上の会社
・総収入金額に占める「特定資産」の運用収入の合計額の割合が75%以上の会社

3、事業継続要件を満たさなくなった場合の例外規定
 下記の事由により要件を満たさなくなった場合でも、他の要件を継続することにより納税猶予は継続されます。
・身体障害者手帳の交付を受けた場合に代表者を退任した場合
・組織再編を行った場合(分割型分割を除く)でも、代表者を継続、雇用の8割を維持、持株比率要件を充足している場合

他にも細かい内容が徐々に整備されてきております。なお、事業承継税制のほか自社株対策でお悩みのオーナー様、是非とも弊社にご相談ください。

相続開始時から遺産分割までの賃料は誰のもの?

マンションを経営しているAさんに相続が発生しました。相続人は子供B、C、Dの3人で、法定相続分はそれぞれ1/3ずつです。遺産分割において、このマンションをBさんが取得することになりましたが、ここで問題となってくるのが遺産分割までのマンションに帰属する賃料等についてです。
考え方については、
①財産を取得したBさんが取得する
②Aさんの財産ではないが、遺産分割で確定させる
③遺産分割までは共有財産であるため法定相続分により取得する
上記の事項が争われた事例について、平成17年9月の最高裁の判決において、③の相続人が法定相続分に応じて取得することが相当とする判断を下されました。判決理由としては、「遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時に遡って効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである」と判事しております。つまり、遺産分割が確定するまでは相続人共有の財産であるため、当然のようにそれに帰属する賃料についても各相続人に受領する権利があるということです。
租税実務においても、未分割の相続財産であるアパートから生ずる不動産所得は、分割が行われるまでは相続人の法定相続分に応じて申告すると解されており、この最高裁の判決については税務上の取り扱いに即したものとなっております。

自社株式についても減額の特例が適用できます。

 相続税は被相続人の相続開始時の正味財産に対して課され、その財産の評価は相続開始時の時価によります。そのうち、宅地や自社株は評価額が多額となり、相続税の負担も大きくなる可能性があります。そこで、相続税の課税価格の特例として、『小規模宅地等の減額の特例』『特定事業用資産の減額の特例』を設け、相続人等の生活基盤維持や中小企業の事業承継の円滑化を図ることとしているのです。今回は、あまりなじみのない『特定事業用資産の減額の特例』について記載することとします。
まずは、制度の概要について簡単にふれておきましょう。

・取引相場のない株式(以下、自社株)の取得者が被相続人の親族であること
・その親族が相続税の申告期限までに引き続きその株式を有し、かつ、その法人の役員であること
・相続開始直前の被相続人とその同族関係者の持株割合等が50%超であること
・相続開始時の同族関係者の持株割合等が50%超で、その取得者の持株割合等が5%以上であること
・この特例の対象となる全ての株式の時価総額が20億円未満であること

 などの要件を満たせば、発行済株式総数のうち2/3に達するまでの部分(10億円を限度)について、課税価格を10%減額することができます。

 また、この制度は相続税の課税価格を計算する際の特例です。相続時精算課税制度を選択して自社株の贈与を受ける場合に、その自社株は必ずその後相続税の課税価格に算入されます。では、その際この特例の適用が受けられるでしょうか。贈与時に一定の書類を提出し、さらに相続時に要件を満たすことで特例の適用が可能となります(平成19年度税制改正による特定同族株式等の贈与を受けた場合の特例による相続時精算課税の適用を受けている場合は適用できません。)。

 最後に、この特例は平成15年度税制改正前は『小規模宅地等の減額の特例』との併用が認められていませんでした。しかし、改正により一定の限度額まで併用が可能となりました。基本的には『小規模宅地等の減額の特例』の方が評価減の効果が高く、対象となる宅地と自社株の双方を相続した場合には、『小規模宅地等の減額の特例』が使われることが多いようです。しかし、小規模宅地等の減額の対象となる宅地等の面積が限度面積に満たない場合や自社株のみを有する場合には、この特例の適用も想定されるため概要を把握しておくと良いでしょう。