現金贈与の注意点 「知って得する贈与税 第8回」

 財産をもらった時の課税関係については、あげる側、もらう側について色々なケースが想定されますが、考え方の基本は個人が個人から貰ったら贈与税が課税され、個人が法人から貰ったら所得税(一時所得)が課税されます。
 今回は一番多いと思われる親から子への現金贈与についてお話したいと思います。

 親から子へ現金を贈与した場合、贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」がありますが、相続時精算課税は選択をして初めて適用できる方法になりますので、今回は通常の贈与である暦年贈与に絞って話を進めていきます。
 最初に述べた原則的な課税の考え方にのっとりますと、親が子供の生活費や学費を出した場合、資金を出してもらった子供の立場からみれば「個人(親)からお金を貰った」ことになるため贈与税が課税されることになります。
 しかし親が子供の学費を負担するようなことにまで課税することはふさわしくないので、夫婦や親子などの扶養義務者の間で生活費や学費などの費用に充てるために行われる贈与は贈与税が非課税とされていて税金はかかりません。このため子供が毎年贈与税の申告をして納税するというようなことが起こらないのです。
 ただし非課税とされているのは、扶養義務者として当然に負担すべき範囲の金銭になりますので、子供が親から貰ったお金を学費等に充てずに、投資や不動産の購入などの別の目的に使っている場合は贈与税が課税されることになりますので注意が必要です。
 贈与税が課税されることとなった場合、贈与税は財産をもらった人、つまり子供に納税義務があります。贈与税は110万円の基礎控除がありますので、1年間にもらった現金が110万円以下であれば贈与税はかからず申告も必要ありません。
 110万円の範囲内で毎年コツコツと現金を贈与していけば、税金の負担なしにかなりの金額を子供に渡すことができます。

 この時に面倒でも守っていただきたいことは
①贈与契約書の作成
②手渡しで現金を渡さずに銀行口座を使って子供の口座に現金を振り込む
の2点です。
 贈与契約書はお互いが「現金をあげます」「現金をもらいます」という認識を持って行われた行為であることを証明するために必要です。契約書が無いと贈与の事実が否定され、親に相続が起こった際に親の財産として相続税の課税財産に取り込まれる可能性もあります。また、銀行口座を利用するのは贈与した金額を明確に残すためです。
 よって、110万円をわずかに超える現金を贈与して贈与税の申告をするというのもひとつの方法になります。 

 また、贈与ではなく貸付という形で親から子供にお金を渡すこともあります。この場合は借り入れた子供の返済能力や返済状況からみて金銭の貸借であると認められるのであれば、借入金に贈与税は課税されませんが、ある時払いの催促なしや返済能力のない子供への貸付のような『借入の形をとっただけで実態は贈与』と認められる場合は借入金に贈与税が課税されます。
贈与の認定を受けないためには、親子間であっても「金銭消費貸借契約書」を作成して、書面で贈与ではなく貸借であるという事実を残しましょう。また、無利息だと利息部分が親から子供への贈与とされることもありますので、多少の借入利息も上乗せした返済計画表を作成してその計画表に従って返済するようにするとなおよいでしょう。返済は直接現金で手渡しするのではなく、返した事実が残るように銀行口座を使うようにしましょう。
 親子の間でお金のやりとりする際に「税金」のことはなかなか意識に上らないかもしれませんが、税金を意識して、後に思わぬ贈与税が課税されないようにしてください。

贈与税の基本的なしくみについては前回まででひと通りご説明しました。
今回からは応用編に入ります。応用編の初回は「住宅取得資金の贈与」というテーマでお届けします。住宅取得資金の贈与については贈与税が優遇される特例があるのです。

≪住宅取得資金の贈与税の特例の概要≫
住宅取得資金の贈与については現在3つの優遇制度があります。
① 相続時精算課税制度の特例
住宅取得資金の贈与については、相続時精算課税制度の適用要件の一つである贈与者の年齢要件が緩和されるという特例があります。具体的には65歳未満の親からの贈与についても相続時精算課税制度が適用できることになります(一般の相続時精算課税制度は65歳以上の親から20歳以上の子供への贈与に適用される制度です)。
なお、平成21年12月31日までの贈与については、年齢要件の緩和に加え、非課税枠が1,000万円上乗せされ、3,500万円となる特例がありましたが、残念ながらこの特例の適用期間は終了しております。ただ、下記②③の特例との併用が可能であるため、一定の要件を満たせば、相続時精算課税制度を適用して平成22年であれば4,000万円まで、平成23年であれば3,500万円までの贈与が非課税となります。 

② 21年6月に可決した追加経済対策としての税制改正による特例
平成21年1月1日から平成22年12月31日までに20歳以上の人が直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合、500万円までの贈与が非課税になります。この特例は暦年贈与課税制度、相続時精算課税制度のどちらでも適用を受けることができます。

③ 平成22年度税制改正による特例
平成22年1月1日から平成23年12月31日までの間に直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、平成22年については1,500万円、平成23年については1,000万円までが非課税となります。この特例は②の特例が拡大されたものと言えます。
ただし、この特例を適用するにあたって注意すべき点は、贈与を受ける側に所得制限があることです。すなわち、受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であることが適用要件の一つになっているということです。

≪住宅取得資金の贈与を受ける場合の注意点≫
住宅取得資金の贈与を受ける場合にあたっての注意点をいくつか挙げてみました。
・ ②③の特例で定められている非課税限度額は、もらう人単位での金額になります。例えば、所得金額500万円の人が平成22年に父親から1,500万円、祖父から1,500万円の住宅取得資金の贈与を受けた場合、非課税額は1,610万円(1,500万円+110万円:暦年贈与課税を前提としております)となり、残りの1,390万円に贈与税が課税されます。あげる人単位ではないことに注意して下さい。
・ 相続時精算課税制度の適用は、贈与税を一定の限度額までは非課税、限度額を超えても低率に抑える効果がありますが、贈与財産が相続時に持ち戻されて相続税の課税対象に含まれてきますので、相続財産が多額になる見込みの方にとっては相続税対策としての効果は期待できない場合があるので注意が必要です。
しかし、②③の特例の非課税枠については、将来の相続税を計算する際にも持ち戻されることがありませんので、完全な非課税枠と言えます。
・ 相続時精算課税制度を相続税対策として利用する場合には、将来の価値の値上がりが確実と思われる財産を移転させるのでなければ意味がありません。しかし"住宅取得資金の贈与"は現金の贈与であり、現金については将来の価値の値上がりは考えられません。この点についても注意が必要です。
・ ②③の特例は相続時精算課税制度を選択している場合にも適用を受けることができますが、相続時精算課税制度は原則として親から子への贈与を前提としています。したがって、祖父母から孫への住宅取得資金の贈与について②③の特例を受ける場合には相続時精算課税制度と組み合わせて適用させることはできません。
・ 最後に、「住宅ローンの返済に充てるために受ける現金贈与について、住宅取得資金の贈与の特例が適用できますか?」という質問をよく受けますが、このような現金贈与については住宅取得資金の贈与にはあたりませんのでご注意下さい。

それぞれの特例の適用要件等について末尾にまとめましたので、住宅取得資金の贈与をお考えの方はご参照下さい。
≪適用要件≫
① 相続時精算課税制度の適用要件は第5回目のコラムで紹介しているのでご参照下さい。
② 贈与期間:平成21年1月1日から平成22年12月31日まで
受贈者:贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上のもの
贈与者:直系尊属
住宅取得資金:住宅の新築、取得、増改築等の対価に充てる資金
居住要件:贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得等に充て、かつ、その
住宅に居住する。もしくは、同日後遅滞なく居住することが確実と見込まれ
ること。
申告要件:贈与を受けた年の翌年3月15日までに必要書類を添付の上、贈与税の
申告書を提出する。
③ ②の特例が拡大されたものなので②の特例と異なる部分のみ取り上げます。
贈与期間:平成22年1月1日から平成23年12月31日まで
  所得制限:受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であること