相続時精算課税制度のメリット・デメリット「知って得する贈与税(第6回)」

前回のコラムで、相続時精算課税制度の内容についてはご理解いただいたかと思います。では、今回は相続時精算課税制度を選択することによるメリットとデメリットについてふれてみたいと思います。

<メリット>
(1)将来相続税がかからない方は、早期に財産移転ができる
相続発生時に相続時精算課税制度による生前贈与分を加算しても相続税がかからないことが予想されるのであれば、子供に多額の生前贈与をしても、結果的に税負担はありません。もちろん、贈与財産の価額が2,500万円を超えれば贈与税を納めなければなりませんが、相続時に申告書を提出することにより納めた贈与税は全額還付されますので、結果的に税負担なしに生前贈与ができるというわけです。
このような方につきましては、相続発生時まで待たずに、親から子供への財産移転を早い段階から積極的に行っていただいてよろしいかと思います。

(2)一度に大型贈与がしやすい
 相続時精算課税制度では2,500万円までは贈与税がかかりません。また、2,500万円を超えた金額に対しても一律20%の贈与税がかかるだけです。
たとえば、2,500万円の贈与を受けた場合、暦年課税制度では贈与税額が970万円となりますが、相続時精算課税制度では贈与税額は0円になります。
これにより、一度に大型の贈与がしやすくなります。

(3)収益物件の贈与により、相続財産の増加を防ぐことができる
 アパートなどの収益物件は、賃貸収入が入ってくるため、その分相続財産が積みあがっていくことになります。早期にアパートを子供に贈与してしまえば、贈与後はその賃貸収入は子供のものとなりますので、相続財産の増加を防ぐことができます。
 ただし、大型の修繕を予定しているような物件については、修繕をして少し待ってから贈与をされた方がいいかと思います。

(4)将来価値の上昇する財産の贈与により、評価額を低くおさえることができる
 相続財産に持ち戻される贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。そのため、土地、自社株、株式公開直前の株式など将来値上がりしそうな財産を贈与し、財産の価額を贈与時の価額で固定化することで、相続財産の評価額を低くおさえることができます。

(5)生前の財産分割、事業承継ができる
 実際に相続が発生すると遺産分割で紛糾するケースは多数見受けられますが、相続時精算課税制度を活用すれば、事前に一部の子供に財産を贈与し、その代わりとして遺留分の放棄をしてもらい、残った子に残りの財産を遺言で相続させるようなこともおこないやすくなります。
 また、以前は、会社の後継者が決まっていても、その後継者に自社株や会長所有の本社敷地などの会社の事業継続に必要な財産を確実に引き継げるかどうかは、いざ、相続が発生してみないとわかりませんでした。このような場合も、生前贈与と遺留分の放棄、遺言を組み合わせることで対応がしやすくなります。

<デメリット>
(1)暦年課税制度には戻れない
いったん相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者については従来からある暦年課税制度には戻れなくなります。よって、110万円(暦年課税制度の基礎控除額)以下で贈与を行ったとしても、必ず贈与税の申告が必要になります(2,500万円の非課税枠を使い切っていれば20%の贈与税も納めなければなりません)し、相続発生時にはその贈与財産は相続財産に持ち戻されることになります。

(2)相続財産を減らすことはできない
相続時には、贈与財産(相続時精算課税適用財産)は、相続財産に持ち戻されますので、上記メリットで書きましたように評価額を下げることはできますが、基本的に相続財産自体を減らすことはできません。よって、最終的に同額の贈与をするのであれば、暦年課税制度による贈与をコツコツした方が、結果的に相続税は安くなります。

(3)小規模宅地等の特例の適用を受けることができない
相続時精算課税制度を利用して贈与する財産については、小規模宅地等の特例の適用を受けることができませんので、贈与する土地の選択に際しては十分な検討が必要です。

(4)今後、相続税の大改正があった場合、逆に不利になる可能性もある
近い将来、相続税の大改正があるといわれています。大改正があった場合、将来相続税がかからないと見込んで相続時精算課税制度を利用したのに、実際は相続税がかかってしまうという人もたくさんでてくることが想定されます。救済措置が設けられる可能性もあるかとは思いますが、現行ではメリットがあったとしても改正内容によっては逆に不利になることもあります。