保険金の受取人が「相続人」の場合の取扱い

 死亡保険金は、民法上、受取人固有の財産であって、被相続人の遺産にはあたらない(相続税法上は、相続財産とみなして相続税の対象となります。)ことから、遺産分割協議の必要がないということは、すでに多くの方がご存じのことと思います。
 例えば、相続人が、配偶者と子供2人のケースで、死亡保険金3,000万円の受取人が「配偶者」と決められている場合、この死亡保険金3,000万円は、配偶者の固有財産であり、配偶者が保険金請求権を有することとなり、子供2人と遺産分割協議を行う必要はありません。

 では、上記のケースで、保険金の受取人が、「配偶者」ではなく、保険契約上、「相続人」となっている場合はどうでしょうか?
 以前、お客様より、相続人が複数いるケースで、受取人が「相続人」となっているので、これは行き先が決まっていないのだから、話し合い(遺産分割協議)で割合を決めることはできないのかというご質問を受けたことがあります。
 この回答ですが、ここはやはり原則に戻って、生命保険金は被相続人の遺産にはあたらず、受取人固有の財産であることから、遺産分割協議の対象とはなりませんので、割合についても分割協議で決めることはできないということになります。したがって、複数の相続人がそれぞれ固有の財産を所有するということになりますので、上記のケース(相続人が配偶者と子供2人)の場合、配偶者と子供2人の各々が固有の財産としての保険金請求権を有するということになります。そうすると問題は、配偶者と子供2人の受取割合ということになります。
この受取割合については様々な意見があるのですが、結論から申し上げると、保険金受取人たる相続人が複数いるときの受取割合は、法定相続分の割合となります。(ただし、保険会社の約款等で別段の契約がある場合や実質的受取人がいる場合には、まずこれに従います。)つまり、配偶者は、2分の1の1,500万円、子供2人が各々4分の1の750万円の保険金請求権を有することになります。
 従来は、民法427条により均等額とされていましたが、H6.7.18付最高裁の判決により、同条の「別段の意思表示」として「法定相続分相当額」になりました。
では、必ず法定相続分の割合で受け取らなければならないのかどうかですが、実質的には割合を変えて受け取ることは可能となります。しかし、その場合には、指定受取人以外の人が取得することになりますので、以下の留意点が必要となります。

(1) 贈与となるケース
 上記のケースで、仮に配偶者と子供2人が均等額である1,000万円ずつを取得した場合、本来であれば、配偶者は1,500万円を固有の財産として取得する権利があるので、法定相続分と実際受取額の差額(子供1人につき250万円)について通常(相当の理由がない場合)は、相続人間(配偶者と子供間)の贈与とされてしまいます。

(2) 代償分割のケース
 遺産分割で、当該差額(子供1人につき250万円)について代償分割とすることも可能です。この場合、贈与税は課されず、相続税となります。
  しかし、代償金の取得は本来の相続によって取得したものであるため、生命保険金を取得したものとみなされず、生命保険金の非課税の適用はありませんので注意が必要です。
注)取得した相続財産を超える代償金を支払うと、それは遺産の分割手続きに該当せず、贈与税が課されますので注意を要します。

 つまり、法定相続分と異なる割合で取得すると通常余計な税金がかかってきてしまうことになりますので、分割協議の調整上、どうしても異なる割合で分ける必要がある場合を除き、法定相続分どおりに分けることをおすすめいたします。