長男相続の悩み-遺産取得課税方式の行方-

 現在の相続税の課税方式は法定相続分課税方式であり、これは法定相続分どおり遺産分割したものと仮定して全体の相続税を算出して、それに対して相続財産をもらった割合で各人が相続税を負担する方法です。
 この方法には大きく分けて二つの問題がありました。一つは納税者側の問題であり、もう一つは課税当局側の問題でした。
 まず、納税者側の問題は、相続税の調査で隠していた財産が見つかった場合、財産を隠していない相続人にも追加の相続税負担がでてきてしまい、さらに加算税・延滞税も課税されます。そのときに財産を隠していない相続人から「自分は何も悪いことしていないのに、なぜ相続税が増えて、さらに加算税・延滞税も課税されるのかが納得いかない」との不満の声をいつも我々は聞いていました。
 課税側の問題は、小規模宅地の評価減の特例です。それは現行のやり方ですと、その特例の対象地を相続していない他の相続人の課税価格まで下がってしまって、本来の趣旨から離れてしまい好ましくない、との批判があったからです。

 そこで出てきたのが「遺産取得課税方式」で、財産をもらった分について一定の基礎控除後の財産に所得税と同じように累進税率をかけて各人ごとに相続税を算出します。この方法ですと、各人ごとに計算しますので、先にのべた納税者側の問題も課税当局の問題もクリアーできて目出度し目出度しということになるはずでした・・・・。

 ところが、この方式に異議を唱えたのが地方の農家の人達でした。地方はいまだに長男がほとんど全ての財産を相続する慣習となっており、長男が全ての財産をもらうとそこに超過累進の相続税がかかってきてしまいます。
その人達から「これはたまらん!ちょっと待った!時期尚早」という声があがり、今回平成21年度税制改正では見送りとなりました。
 
 地方の農家の人達に何らかの手当てする制度を作った上でないと、この遺産取得課税方式の導入は難しいかもしれません。
 そうなるとここ数年の間に変更することは事実上不可能ではないかと思われます。