法定相続人である未成年者や障害者が、相続又は遺贈によって財産を取得した場合には、相続税額の計算においては、各人ごとに税額控除が設けられております。
 未成年者控除については満20歳に達するまでの年数について1年あたり6万円の控除があり、障害者控除については一般障害者にあっては6万円、特別障害者にあっては12万円に70歳に達するまでの年数を掛けた金額を控除することとされています。なお、1年未満の年数である場合は1年として計算します。これらの控除は、まず、該当する相続人の相続税額から控除し、控除額が相続税額を超える場合には、控除不足額を他の相続人の相続税額から控除することができます。ただし、要件として未成年者や障害者の扶養義務者であることが必要となります。
 ここでの扶養義務者とは一般的に配偶者、直系血族、兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいいますが、三親等内の親族で生計を同じくしている場合は家庭裁判所の審判がない場合であっても扶養義務者に該当するものとして取り扱われます。仮に未成年者や障害者が相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合には、各人の相続税は発生しませんので控除不足額をその者の扶養義務者の相続税額から控除したいところですが適用を受けることができません。したがって、その点については注意が必要です。しかし、未成年者や障害者が少しでも財産を取得していれば、未成年者控除前又は障害者控除前の相続税額がゼロであっても、扶養義務者の相続税額から控除するものとして取り扱われます。ここでいう財産は課税、非課税の区分がありませんので非課税となる形見分けの着物や価値のない貴金属なども財産を取得したことに含まれます。

宅地の有効活用と不合理分割

 宅地の評価をする場合において、例えばとある一筆の宅地をそのまま評価する場合と、その宅地を二つに分筆して評価する場合とでは評価額が変わる可能性があります。それは分筆により奥行価格補正率や不整形地補正率等が変わることがあるためです。親族間で遺産分割等をする場合に、この性質を利用して宅地の評価を下げるため、その宅地を現実の利用状況を無視したようなありえない分割が行われることがあります。これを不合理分割といいます。
それでは具体的にどのような場合が不合理分割となるのでしょうか。一般的には、現実の利用状況を無視した分割により無道路地・不整形地・奥行短小な土地や接道義務を満たさないような土地ができる場合や、現在および将来においても有効な土地利用が図られないと認められるような場合には、不合理分割と認定される可能性があります。例えば、分筆後のそれぞれの宅地を単独で有効活用できないケース(一方の宅地が極端に狭いことなど) や、単独で有効活用できたとしても容積率や建ぺい率が低くなることにより今までは3階建てまで建築することができたにもかかわらず、分筆後には1階建てまでしか建築できなくなるような利用に制限がついてしまうケース等は有効活用の図られていない場合に該当するものと考えられます。
 仮に不合理分割であると認められると、その宅地の価額は分割後の所有者単位で評価するのではなく、その分割前の1画地の宅地として評価します。こうすることにより実態に則した評価・課税を行います。なお、この取り扱いは同族会社間等で不合理分割が行われた場合においても適用されます。
 この取り扱いは逆をいえば、将来的において宅地の有効活用がされると見込まれ、不合理分割でないような分割をすれば宅地の評価額は下がる、ということがいえます。実態に則した内容であれば、宅地をそのまま評価するのではなく、分割して評価を下げることを検討することも相続税・贈与税を節税する一つの手段となります。

遺言があれば...


最近、遺言があればこんなに大変な思いをしなくても良かったのに、、、と思うことがありました。
お子さんがいないご夫婦で、今回ご主人が亡くなりました。相続人は奥様とご主人のご兄弟のお子様(奥様から見たら甥姪)5人の合計6人です。今まで全てご主人まかせだったそうで奥様は「私は何もわからないのよ」と、とても不安そうです。妹さんが心配していろいろ手伝ってくれてはいるのですが、やはり奥様方の家の方です。あまり表立って手伝ってしまっては、ご主人方の相続人から財産目当てと思われてしまう可能性もあるからと遠慮がちです。
ご主人は生前奥様に「財産はお前がすべて相続してくれ」というようなことを言っていたそうですが、遺言を作成したわけでもなく、なにかの切れ端に簡単に書いただけで、奥様もそんなメモではどうにもならないだろうと捨ててしまったと言います。
相続人が多いこともあり、特例の適用を受ければ相続税はかからないのですが、遺言がないため、遺産分割協議書と申告書に相続人全員の署名捺印が必要となります。奥様の今後の生活もありますので、なんとかハンコ代ということで皆さんに○十万円ずつで署名捺印をしてもらえないかとお願いすることになりました。
お子さんがいらっしゃらないということで、奥様が相続された財産は奥様に万が一のことがあれば奥様のご兄弟が相続することになります。そうなると、もともとご主人方の家の財産であったものが奥様方の家のものとなってしまいます。その辺に関する抵抗感をお持ちになる方はいらっしゃいました。
最終的にはなんとか皆さんにご納得いただき、署名捺印をいただけることにはなりましたが、皆さんの回答を待つ間も、奥様は不安で不安で眠れないとおっしゃっていましたし、皆さんにご都合を聞いて、いざ署名捺印、といっても当日体調が悪いからと急に欠席される方がいたりと全員の署名捺印をいただくのにとても苦労をしました。
皆さんいい方で、奥様のご事情を酌んでくださったので、もめることはなかったのですが、それでも、やはり甥姪となるとお付き合いがあまりない方もいらっしゃるので皆さんがどんな反応をされるのか奥様は大変心配されていましたし、お一人ずつお電話をされたりしたようです。また、もしもめていれば、甥姪の皆さんには遺留分はないとはいえ、ずっと未分割のままで奥様の心労は絶えませんし、もっと多くを分割することになれば奥様の老後の資金が減ることになり、それはそれで不安の種が残ることになります。
長年支えあってきた最愛のご主人を亡くされて悲しみの中にいる奥様を、さらに相続問題で不安にさせることのないように。ご主人から奥様への最後のラブレターとして遺言を残されてはいかがでしょうか。

米国財産の贈与

  日本の世田谷区等々力に住所を構えるAさん(55歳)は、米国カリフォルニア州に所有していた不動産を、将来アメリカに住むことを願っている長男のBさん(22歳)に贈与しました。このとき、Bさんは日本に住んでいるため日本の相続税では、無制限に全世界の財産に対して課されます。したがいまして、日本では通常通り贈与税の申告が必要です。また、米国においてもアメリカにある財産に対してアメリカの贈与税が課されます。つまり、日米双方で課税がされるので、どちらか一方で控除されなくてはなりません。
  日米相続税条約では、他方の国内にある財産について課された租税については、自国の租税から控除するものとしています。そのため、今回のケースでは、アメリカの贈与税を日本の贈与税から控除します。これを外国税額控除といいます。法人の分野ではよく知られていますが、個人の分野では、それほどは知られていません。
  具体的には、日本の贈与税を先に申告をします。日本の贈与税の申告期限は贈与年の翌年3月15日までです。その後、アメリカにおいて申告をします。アメリカの贈与税の申告期限は贈与年の翌年4月15日までです。さらに再度日本に戻りまして、アメリカで贈与税が課せられたことを証する書類等を添付して更正の請求という税金を返してもらう手続きをします。
  ところで、アメリカでは財産をあげた人(贈与者、父Aさん)に贈与税が課せられます。一方、日本では財産をもらった人(受贈者、長男Bさん)に贈与税が課せられます。そのため、Aさんがアメリカで納めた贈与税が日本においてBさんに還付される図式になります。この還付される税額相当分の移転を考慮すれば、国内にある財産の単純な贈与よりも有利となる可能性もあります。
  ただし、納税義務者の判定(住所が日本なのかアメリカなのか)、米国での申告手続(英文での申告が必要です)、財産評価(不動産の鑑定も必要です)など難しい部分も多いですので、十分な比較検討が必要となります。