アメリカでは、大統領選挙が終盤を迎えています。共和党のマケイン候補と民主党のオバマ候補との最終決着を11月に控えているところですが、現ブッシュ大統領の減税によって大きな変化を迎えようとしているアメリカの相続税の行方を簡単に触れておこうと思います。
まず、2010年にアメリカの相続税は廃止されます。これは、2001年から始まったサンセット法(日本の租税特別措置法のような一定期間の暫定的な法律です。)に基づき、相続税の税率が段階的に下げられ、2010年の1年間だけ、相続税が廃止されるということになります。また、2009年までの制度では、相続時の時価を譲渡所得の計算に用いる取得価額に置き換えます。しかし、相続税が廃止される2010年の相続については、譲渡所得の計算に用いられる取得価額が日本の制度と同じように引き継がれることになり、相続時の時価で置き換えられるということにはなりません。しかし、何の手当てもなされないと、2011年においては、また相続税が再び復活し、2001年当時の税制に急変するというシナリオになります。
そもそもアメリカの相続税では、遺産を取得した人に課税がされるのではなく、遺産を残す被相続人に課税がされる遺産課税方式となっております。そのため、以前は、被相続人が日本に居住し、相続人がアメリカに居住していた場合には、日本とアメリカの両方において納税義務者とならないという事態がありました。しかし、日本の相続税では、平成12年に国籍基準が導入されております。具体的には非居住無制限納税義務者と言われ、相続又は遺贈により財産を取得した者が日本国籍を有する場合には、日本に居住していなくとも、被相続人と相続人のいずれもが5年超の期間日本から離れていない限り、全世界財産が課税の対象とされます。
ところで、制限納税義務者の場合に課税の対象が国内に限られるので、有利と思うかもしれませんが、常にそうとも限りません。仮に日本に財産が100、その財産に係る負債が20あり、アメリカに財産が40、その財産に係る負債が60あったとします。その場合、
1.無制限納税義務者の課税財産の合計は100+40-(20+60)=60
2.制限納税義務者の課税財産の合計は100-20=80
となり、逆に制限納税義務者のほうが不利になることもあります。多国籍間の財産の所在についてバランスをとることが必要かと思われます。
平成12年以前の事件ですが、海外に住居を移した長男への株の贈与の無申告について争いがある「武富士事件」については、1審で納税者勝訴、2審では国側勝訴となっていて上告審に注目が集まっております。アメリカ相続税の行方もそうですが、国際相続について様々な事案が増えていきそうです。
参考文献
・税研 139号 矢内一好「国際相続の税務」
・三木義一 前田謙二『よくわかる国際税務入門』(有斐閣)


