事業承継税制は救世主となるか?

昨年12月半ばに公表された「平成20年度税制改正大綱」において、かねてから要望の高かった事業承継税制が整備されることが明記されました。「これで事業承継対策はいらなくなった!」と喜んでいるオーナー様もいらっしゃるかもしれませんが、果たして手放しで喜べる税制なのだろうか、というのが私達実務家の現時点における見解です。以下、新しい事業承継税制の注意点をまとめましたのでご参考ください。

1.相続税の「減額」ではなく、「納税猶予」であること
 新聞報道等において、「相続税の80%が減額になる」と誤記されているケースもあるぐらいですから、今回の税制改正を「相続税の減額」と誤認している方も多いようです。
 残念ながら、新しい事業承継税制は「相続税の減額」ではなく「相続税の納税猶予」であり、適用要件を満たさなくなった場合には、相続税に利子税を併せて納付しなければなりません。オーナー様は、後継者様に事業や債務保証だけでなく、相続税という潜在的な債務も承継させることになりますので、後継者選びの意思決定には「決死の覚悟」が必要になるといえます。

2.対象となる後継者は1人であること
 新しい事業承継税制の適用が受けられるのは、1つの会社につき1人の後継者とされています。したがって、長男が代表取締役、二男が取締役営業部長、長女が取締役経理部長といったように家族が一丸となって事業を行っている場合であっても、特例の適用を受けられるのは長男のみということになります。

3.対象となる非上場株式は、後継者の持分3分の2までであること
 80%の納税猶予の対象となるのは発行済議決権株式総数の3分の2までですから、3分の2×80%=53.3%が納税猶予の対象ということになります。つまり、「80%の納税猶予」とはいうものの、結果として納税猶予の対象になるのは「相続税のおよそ半額」に限定されてしまいます。
 また、3分の2までというのは「相続等の結果、後継者の持分が3分の2まで」ということですので、父が3分の2、長男が3分の1を出資して設立していた場合には、父の相続財産である非上場株式については、納税猶予の対象は「3分の1」に限定されてしまうことになります。

 このようなことから考えると、新しい事業承継税制の適用にあたっては慎重な判断が必要といえます。また、適用を受ける方針となった場合であっても、適用要件が厳しく定義されているため事前に十分な要件整備を行っていなければ、いざというときに適用が受けられないということもありえます。
 事業承継税制に興味のあるオーナー様、早い時期にぜひとも弊社にご相談ください。