成年後見制度

近年の日本は高齢化が進み、判断能力が十分でない老人をターゲットとした振り込め詐欺やリフォーム詐欺が横行しています。その中でも認知症の方を狙った犯罪が増えてきています。
 次のような心配をお持ちの方いらっしゃるのではないでしょうか。
「認知症になって悪質な訪問販売で必要のない高額な商品を買わされたら、お金を取り戻すことができるのだろうか。」
 そんな方におすすめするのが成年後見制度です。成年後見制度とは判断能力が十分でない方々を保護・支援するための制度です。成年後見制度を使えば、認知症の方がした契約を取り消したり、代わりに契約などをすることができるようになります。
成年後見制度には、①すでに判断能力が十分でなくなった人に適用される「法定後見制度」と、②十分な判断能力があるうちに本人の意思で行うことができる「任意後見制度」がありますが、今回は成年後見制度についてお話します。
 任意後見制度というのは、将来に備えて判断能力が十分あるうちに、自分で将来の後見人を選び、自分が判断不能な状況になったときには後見人に代理をしてもらうという制度です。任意後見人にはその仕事を監督する家庭裁判所が選んだ「任意後見監督人」をつけなければいけないことになっており、監督人は任意後見人の仕事ぶりを家庭裁判所に報告しなければならないため、任意後見人は勝手なことはできません。
 任意後見制度を活用して、安心した生活を送りましょう!

議決権制限株式

 ご存知の通り平成18年5月に会社法が施行されました。相続コラムに会社法?と思う方もいらっしゃると思いますが、実はうまく活用すれば相続税、特に事業承継に大いに役立つことがあります。それが「種類株式」といわれるものです。会社法の施行によって、さまざまな特色をもつ種類株式を発行することが可能となりました。今回はその中のひとつである議決権制限株式を活用した事業承継についてご紹介したいと思います。
 議決権制限株式とは、株主に配当を受ける権利や、残余財産分配請求権は付いているものの、株主総会での議決権は制限されている株式のことをいいます。制限されるといってもすべての権利を制限するわけでなく、取締役の選任など特定の事項のみを制限することも可能です。
この議決権制限株式を活用して、事業承継者となる後継者には議決権のある株式を、後継者でない相続人や従業員等に議決権制限株式を付与することにより、後継者に経営を一手に集中させることにより、将来経営をスムーズに承継させることができます。
  また、事業承継だけに限らず、オーナーの保有する議決権制限株式を生前から贈与又は譲渡しておけば、オーナーの支配権は確保しながらも、相続財産となる株式を減少させることが可能です。
この議決権株式の発行方法として、①定款変更によりすでに発行している株式を議決権制限株式に変更する方法②議決権制限株式を新規発行する2つの方法があります。いずれの場合であっても、定款に議決権を行使できる事項・議決権行使の条件・発行可能種類株式総数を記載しなければなりません。また、定款変更のためには、株主総会の特別決議が必要です(議決権の過半数を保有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要)。
 相続人が息子一人である場合など、議決権が分散する可能性が低いときは問題ないと思いますが、相続人が複数いるときは株式が分散するとともに支配権も分散してしまい、後継者にうまく事業承継することができないことが考えられます。そのようなときに備えて議決権制限株式をご検討してみてはいかがでしょうか。

相続税の課税方式の見直し

最近のコラムでも書いていますように、平成20年度税制改正大綱において、事業承継税制が整備されることになりました。これに伴い、今回相続税の課税方式の見直しも検討されることになりましたが、では、なぜ相続税の課税方式の見直しが必要なのでしょうか?
まず、わが国の相続税の課税方式を説明しますと、「法定相続分課税方式」という方式が採用されています。「法定相続分課税方式」とは、遺産総額に対して法定相続人が法定相続分どおり遺産を取得したものとみなして相続税の総額を算出し、それを各人の取得財産額に応じて按分して課税する方式です。これに対し、今回検討されている課税方式は「遺産取得課税方式」といい、ドイツ・フランスなどで採用されている課税方式で、遺産を取得した人が取得した遺産に対して算出された相続税を各人で納税するという方式です。
従前より、「法定相続分課税方式」には下記のような問題点が指摘されていました。
① 各種の相続税の課税上の特例の効果が、その特例の適用と無関係な相続人にまで及んでしまう
② 相続により取得した遺産の額が同額であっても法定相続人の数により税額が異なってしまう
③ 相続人一人の不正で他の相続人にも追徴課税が及んでしまう
 事業承継税制の目的は、あくまで「事業の円滑な承継」となっております。「法定相続分課税方式」では、上記①のように、事業承継に関係のない後継者以外の相続人まで本税制の恩恵を受けてしまうことになりますので、本来の趣旨とずれてしまいます。よって、後継者以外の相続人にその効果が及ぶことのないよう、「遺産取得課税方式」への改正が検討されることになったものと思われます。

事業承継税制は救世主となるか?

昨年12月半ばに公表された「平成20年度税制改正大綱」において、かねてから要望の高かった事業承継税制が整備されることが明記されました。「これで事業承継対策はいらなくなった!」と喜んでいるオーナー様もいらっしゃるかもしれませんが、果たして手放しで喜べる税制なのだろうか、というのが私達実務家の現時点における見解です。以下、新しい事業承継税制の注意点をまとめましたのでご参考ください。

1.相続税の「減額」ではなく、「納税猶予」であること
 新聞報道等において、「相続税の80%が減額になる」と誤記されているケースもあるぐらいですから、今回の税制改正を「相続税の減額」と誤認している方も多いようです。
 残念ながら、新しい事業承継税制は「相続税の減額」ではなく「相続税の納税猶予」であり、適用要件を満たさなくなった場合には、相続税に利子税を併せて納付しなければなりません。オーナー様は、後継者様に事業や債務保証だけでなく、相続税という潜在的な債務も承継させることになりますので、後継者選びの意思決定には「決死の覚悟」が必要になるといえます。

2.対象となる後継者は1人であること
 新しい事業承継税制の適用が受けられるのは、1つの会社につき1人の後継者とされています。したがって、長男が代表取締役、二男が取締役営業部長、長女が取締役経理部長といったように家族が一丸となって事業を行っている場合であっても、特例の適用を受けられるのは長男のみということになります。

3.対象となる非上場株式は、後継者の持分3分の2までであること
 80%の納税猶予の対象となるのは発行済議決権株式総数の3分の2までですから、3分の2×80%=53.3%が納税猶予の対象ということになります。つまり、「80%の納税猶予」とはいうものの、結果として納税猶予の対象になるのは「相続税のおよそ半額」に限定されてしまいます。
 また、3分の2までというのは「相続等の結果、後継者の持分が3分の2まで」ということですので、父が3分の2、長男が3分の1を出資して設立していた場合には、父の相続財産である非上場株式については、納税猶予の対象は「3分の1」に限定されてしまうことになります。

 このようなことから考えると、新しい事業承継税制の適用にあたっては慎重な判断が必要といえます。また、適用を受ける方針となった場合であっても、適用要件が厳しく定義されているため事前に十分な要件整備を行っていなければ、いざというときに適用が受けられないということもありえます。
 事業承継税制に興味のあるオーナー様、早い時期にぜひとも弊社にご相談ください。