事業を引き継いだ相続人の確定申告のポイント

 只今、平成19年分の所得税の確定申告の真最中です。

ところで、平成19年中に相続によって被相続人の事業を引き継いで新たに事業を開始した相続人は、今この時期に初めて確定申告書を税務署に提出することになります。

ということで、今回は相続により事業を引き継いだ相続人の確定申告において、実務上よくある注意すべき点について紹介したいと思います。なお、ポイントのみをご紹介しますので、詳細については各皆様でご対応頂きますようお願いします。

①青色申告の承認申請

相続で事業を引き継いだ場合、まず初めに注意しなくてはならないのは、青色申告の承認申請です。今まで何も事業を営んでいなかった相続人が、初めて青色申告者になるためには、原則として相続開始日から4ヶ月以内(相続開始日や相続以前から事業を行っていた場合などは提出時期が異なるので注意が必要)に青色申告の承認申請が必要です。  

②減価償却資産の償却方法

相続した減価償却資産については、被相続人の帳簿価額は引き継がれますが、償却方法については、「相続」は新たな取得に該当するため、引き継ぐことができません。従って、被相続人が定率法を採用していた場合でも、相続人については、法定償却方法である定額法が強制的に採用されます。なお、相続人が定率法を採用したい場合には、その年の3月15日までに税務署に届出書を提出する必要があります。

③減価償却費の月数按分

相続した減価償却資産の月数按分については、被相続人、相続人ともに相続開始日にかかる月を含めて計算することができます。従って、被相続人とあわせて合計13ヶ月分の減価償却費の計上が可能となります。

 例)平成19年6月15日相続の場合

  A 被相続人の準確定申告・・・1月から6月までの6ヶ月分

  B 相続人の確定申告・・・6月から12月までの7ヶ月分

④事業用資産を相続により取得した場合の登録免許税

 平成17年1月以降の相続等により取得した場合の登録免許税は必要経費となります。

⑤相続開始日から遺産分割までの賃料

 過去のコラム「相続開始時から遺産分割までの賃料は誰のもの?」をご参照。

⑥生計一の相続人が支払った被相続人の医療費

相続人の医療費控除の対象となります。(詳細は過去のコラム被相続人の医療費をご参照。)

⑦相続した財産を相続税の申告期限後3年以内に譲渡した場合

所得税の取得費加算の特例が使えます。

以上

遺言は絶対?

父は自分亡き後、遺産を巡り家族で争いを起こして欲しくないため、遺言書を作成しました。遺言の内容は相続人ABCのことを考え、下記のようにしました。
配偶者である母Aには自宅、長男Bには預貯金、長女Cには別荘

数年後、父が亡くなり、遺言書を読む家族。しかしながら、相続人の3人は父の遺言書の内容どおりではなく、下記のように相続したいと話し合いました。
母Aには預貯金、長男Bには別荘、長女Cには自宅

 父の残した遺言書の内容とは異なりますが、相続人間で話した結果での遺産分割は可能でしょうか?
答えは可能です。この場合、相続人の全員の同意があれば遺言と異なる遺産分割をすることができます。
 
では、父が遺言作成時に弁護士を遺言執行者としていた場合には、どうなるのでしょうか?
遺言執行者は遺言の作成者である父の意思を汲み、遺言内容にしたがって執行することが本来の職務ですから、相続人全員同意のもとに遺言内容と異なる財産処分を相続人から求められても遺言内容を執行することができます。
そのため、相続人が遺言とは異なる分割を望むのであれば、相続人全員の同意はもちろんのこと、遺言執行者の同意を得て遺産分割協議を成立させる必要があります。

(参考文献:清文社発行 御器谷 修他著「Q&A 遺産分割の実務―相続・遺言・登記から税務まで」)

相続漫遊記

 先日相続のお客様の現地調査を行うため極寒の北海道に行って参りました。現地調査とは実際に対象の土地をみて、メジャーで長さを測ったり、写真を撮ったりして土地の評価の参考とすることです。
日帰りの旅のため、市役所→現地→区役所→市役所と駆け足で回って来ましたがとても有意義な現地調査旅行となりました。

 ちょうどお邪魔した時間がお昼休みだったため二度行く羽目になった市役所では特に評価額の減額に使えそうな有用な情報は得られなかったのですが、現地及び区役所で収穫がありました。
更地のままで荒れた感じになっているその土地は一部が崖のようになっておりました。相続税の評価をする場合、崖地は評価額の減額要素となります。これが一つ目の収穫です。この現地調査をもとに管轄の区役所に行き、その旨をお話しましたらとても優しく対応してくださり、また翌日にも区役所の方が現地を見てくださるとのご回答をいただきました。

 はるばる北海道まで出向いた甲斐があり、その後の一杯がとても美味しいものとなりました。上司が食べきれないほどのご馳走をしてくれ大満足の一日でした。今度はもっとゆっくり訪れたいものです。
崖地の事実と区役所の方の回答を手土産に東京に戻ってまいりますと、翌営業日にはもうご連絡をいただきました。その結果は対象地には崖地が含まれており、固定資産税を下げることができるとのことでした。これが二つ目の収穫です。
今回の現地調査では相続税の申告に有用な情報を得られたばかりではなく、固定資産税まで下げていただき、また地方の方のあたたかさを肌身に感じました。今後訪れました際もどうぞ宜しくお願い致します。

最後に少し宣伝を。
土地の評価は評価する税理士により千差万別です。我が辻・本郷税理士法人は相続財産のあるところ北は北海道から南は沖縄までどこまででも出向き、実際に現地を見て、正確かつお客様のニーズに応えた評価を行います。相続税の申告にお悩みの皆様、どうぞご一報ください。

被相続人の医療費

所得税の確定申告の受付が、もう間もなく始まります。皆さまご準備はすすんで
いらっしゃいますでしょうか。今回は、亡くなられた方の医療費の取り扱いについて
事例をご紹介いたします。

【質問】
 昨年、母が入院中に亡くなりました。
入院中にかかった医療費ですが、生前母が支払ったものと、死亡後私が
支払ったものがあります。
確定申告の医療費控除の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
 
【回答】
お母様が支払った医療費は、お母様の準確定申告で医療費控除をすることが
できます。
また、貴方が支払った医療費は、貴方がお母様と生計一の親族であれば、確定申告で医療費控除をすることができます。

【解説】
 相続があった場合の医療費控除は、支払時期・支払者によって取扱いが
異なります。詳細は以下のとおりです。

(1)相続開始までに支払った医療費
a)被相続人が支払った場合
→相続開始時までに支払った医療費は被相続人の準確定申告で
医療費控除の対象となります。
b)生計一の親族が支払った場合
→生計一親族の確定申告の際、医療費控除の対象となります。

(2)相続開始後に支払った医療費
a)生計一の親族が支払った場合
→生計一親族の確定申告の際、医療費控除の対象となります。
  医療費を相続財産から支払った場合でも控除の対象となります。
b) 生計別の親族が支払った場合
→生計別親族の確定申告の際、医療費控除の対象とすることは
できません。

※相続税の債務控除
相続開始後に相続人が支払った医療費は相続税の計算上
債務控除の対象となります。