2008年1月アーカイブ

 相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産は、相続財産に加算されて相続税が計算されます。これでは、せっかく生前贈与をしてもあまり効果が得られません。しかしながら、このルールが適用されるのは、相続人および受遺者(遺贈により財産を取得した者)のみですので、相続人ではない孫や子の配偶者等に贈与をしておけば、3年内贈与加算の適用はありません。
 ただし、ここで注意しておかなければならないのは、その贈与を受けた孫や子の配偶者等が被相続人を被保険者とする生命保険の受取人になっていないかどうかです。
 生命保険金の受取人が相続人以外の場合は遺贈という扱いになり、本来相続人ではなかった孫や子の配偶者等が受遺者となってしまうため、3年内贈与加算の適用を受ける形となってしまいます。
 したがって、相続人以外の方に贈与したり、生命保険の受取人に指定する場合には、相互の事情を勘案して、実行することが必要となります。
 以下、詳細解説です。

1.相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(相続税法19条)

 相続や遺贈によって財産を取得した人が、その相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から財産を贈与されたことがある場合には、その贈与によって取得した財産の価額(贈与を受けた時における価額)を相続税の課税価格に加算した上で、相続税の総額や各相続人などの相続税額を計算することとされています。 

2.推定相続人以外に贈与しておけば、3年内贈与加算には該当しません。
→孫、子の配偶者など

3.生命保険金の受取人が相続人以外の場合は遺贈になります。
①生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は使えません。
②相続税の2割加算の対象となります。
③3年内贈与加算の対象となります。
→孫や子の配偶者などを生命保険の受取人にする場合は要注意です。

4.相続税の2割加算(相続税法18条①)
 相続や遺贈によって財産を取得した人が、その被相続人の一親等内の血族(代襲相続人となった孫等を含む)及び配偶者のいずれでもない人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の100分の20に相当する金額を加算することになっています。
 なお、被相続人の一親等内の血族には、被相続人の直系卑族で当該被相続人の養子となっているもの(いわゆる孫養子等)は含まれません。

 →孫養子への相続、兄弟姉妹相続、遺贈の場合は、2割加算の対象となります。

遺言書には、大きくわけてご自分で書きご自分の責任で保管しておく、「自筆証書遺言」と公証人役場で作成する「公正証書遺言」の2種類があります。当たり前のことですが、「自筆証書遺言」は変更があれば簡単にいつでもすぐ書き直せます。そのかわり、相続が発生した後、家庭裁判所に第三者立会いのもと、相続人全員が集まり遺言であることをお互いに確認する手続き、「家庭裁判所での検認」を受けなければ正式な遺言書としては認められないことになっています。その点「公正証書遺言」は、公証人の立会いのもと、正式な遺言書として確定されていますので、実際に相続が発生したときは、検認という面倒な手続はいりません。但し、変更するときは再度、公証人役場に出向かなければならないという点では、「自筆証書遺言」よりも面倒ともいえます。そこで、「公正証書遺言」で遺言を作成する場合、次のような点をご注意ください。

1 変化しそうな資産は詳細に記載しないこと

  遺言書を作成してから実際の相続の発生までの期間に遺言書作成時のお手持ちの金融資産をそのままにしておくことは現在のご時世ではまずないと思われます。遺言に孫○子は○○銀行の定期預金 ○○円のみと書かれたとします。この遺言のことを忘れて、その定期預金を證券投資信託に変えたとたん、相続が発生してしまったらどうなるでしょうか? 孫 ○子は何ももらえないことになります。孫 ○子に金融資産をあげたいのなら、預貯金のうち○分の1、上場株式のうち○分の1等と大きな分類で記載されると、多少、金融資産の内容を変更してもすぐに遺言書を変更する必要がありません。

2 まずは絶対にあげたい資産のみだけを書いておく

  今現在、これだけは○○にあげたいという資産のみ決まっていらっしゃる場合、たとえば、ご自分で経営されている会社の株式や、会社で使用している資産、ご自宅など、その資産だけを記載した遺言書をまずは作成しておかれたはいかがでしょうか。何が何でも全財産くまなく分配する遺言書を書かなければならないということはありません。但し、この場合は、資産だけでなく、その資産を相続する際にかかる相続税の資金について、遺言書に記載するかどうか検討されてください。

 財産をあげる人、財産をもらう人の心がいつまでも変わらないという確証はありません。
そういう意味では1度遺言書を書いたら終わりということはありません。毎年、除夜の鐘を聞くときにでも、来年も書いた遺言書の内容でいいかどうか、チェックされることをお勧めします。

女心と相続

これは私と同業者のA先生のお話です。

昨年A先生のお父様に相続がおこり、相続人はお母様、お姉様、A先生の3人でした。A先生がご両親と同居されていて、日ごろの家庭内の事は全てA先生の奥様にお願いをしており、とても仲の良い家族関係であったそうです。
お母様とお姉様との遺産分割も終わり、相続税申告書も提出して全てが無事に終了しました。
ですが、何かおかしい?どこかで誰かが自分を見ている、と原因が分からない異変に気がつきました。なんだか分からないのですが確かに、どこかで自分をとても冷たい目でじっとみているような気がし、数週間落ち着きませんでした。
A先生は恐らく相続の関係だと思い当たり、さかのぼってじっと考えました。
やっと分かったのです。原因はA先生の奥様の目が自分を冷たく見ていることを。

そこでA先生は「今回の遺産分割で何か問題があった?」と奥様に質問しました。
奥様はしらっと「A家の相続ですので、私には関係ありません。ご自由に!」と言い放ったそうです。
A先生は自問自答して、さらに悩みました。
そのような状態でのさなかにA先生と、ある研修会の懇親会で隣り合わせになりました。上記の事情をお聞きした私にはすぐに答えが分かりました。

奥様はA家では相続人ではありません。がしかし、お亡くなりになったお父様の面倒を実質的に見てきたのは自分であるとの自負があるのです。
それに対してお姉様は相続人ではあるけれども老後のお父様の面倒は何一つみていません。
こだわりはそこにあったのであろうと思います。

恐らく奥様は、お母様とお姉様から「長い間、父の面倒をみてくれてありがとう。本当に感謝しています」のような一言が欲しかったのだと思います。

そこでA先生への最後のアドバイスとして、「二人とも言葉では言わなかったかもしれないけど心の中では君に感謝していると思うよ。当然、僕は何倍も君に感謝しているよ。その感謝の気持ちとして君の好きな物をプレゼントするよ。」と奥様にお話をしてくださいと。
「でも、110万円(贈与税の基礎控除)を超えない範囲でのプレゼントにしてください」とも。

親の財産を相続により取得したものの、その財産が不要であったり、相続税の納税資金を確保したりするために譲渡することがあります。この場合、財産を譲渡していますので所得税の確定申告をする必要があります。ただし相続財産を譲渡したときは、以下の特例があるため通常の譲渡所得の計算と相違する点があります。

①取得時期・取得費の特例
②相続税額の取得費加算

①について、相続により取得した財産の取得時期・取得費は、相続発生時ではなく、被相続人の取得時期・取得費を引継ぎます。これには被相続人と相続人双方の保有期間中のキャピタルゲインについて課税をするねらいがあります。
相続に際して支出した不動産登記費用や名義変更費用については、その取得費に加算(業務用資産の場合は支出時の必要経費に算入)することができますので、領収書等は大切に保存しておきましょう。
また、この規定は相続だけでなく贈与により取得した財産についても適用があります。

②について、相続により取得した財産を相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始の日の翌日から3年10ヶ月以内)に譲渡した場合には、支払った相続税額のうち、その譲渡した資産(土地を譲渡した場合は、すべての土地)に対応する部分として一定の算式により計算した金額を取得費に加算して譲渡所得の計算をすることができます。取得費に加算しますので、その分所得が小さくなり、所得税を軽減する効果があります。
この規定の適用を受けるためには相続税の申告書を添付しなければなりませんので、こちらも大切に保存しておきましょう。

年が明けていよいよ本格的な確定申告の季節に入りました。平成19年中に上記のような譲渡をされた方は確定申告の期限(今年は3月17日)までに申告と納税をしなければなりませんのでお忘れなく。