土地に歴史あり ~土地の面積について~

 相続税申告のご相談を受けた際、被相続人の方の財産・債務その他ご趣味等を伺いますが、不動産(特に土地)のお話からは歴史の長さを感じさせられます。今回は簡潔ではありますが、財産評価に関連した地積(土地の面積)について紹介致します。

 地積は登記簿謄本・固定資産税の課税明細書に記載があります。果たして、この地積は本当に正しい(現在の状態を表している)のでしょうか?
相続税の申告資料に同封されているものに「相続税申告のためのチェックシート」があり、「土地(特に山林)に縄延びはありませんか」という質問項目があります。この「縄延び」という言葉をご説明します。
縄延び(なわのび)とは、登記簿上の土地面積より実測面積の方が大きいことをいい、それとは逆に実測面積の方が小さいことを縄縮み(なわちぢみ)といいます。土地改良、土地区画整理、国土調査のされた土地は現状に近い数字で示されますが、地積の更正登記・分筆登記の跡の無い地方の物件で目立つものです。面積が広大で手付かずの状態にある山林・原野では、実測地積が公簿面積の数倍もある地域も存在します。
縄延びの名称は、昔の測量において縄を用いていたことに由来します。測量は高度な測定技術と手間のかかる作業であり、それを国単位で行うとなると大層な一大イベントにまで発展します。明治時代の地租改正において行った測量が曖昧であることの名残であり、登記制度(権利に関する事項)や土地台帳制度(地積等の表示)が始まったのも同じ明治時代です。明治時代初期は、測量を基に作られた土地台帳に地積を書き込んでいったものと伝えられており、その後の登記簿と土地台帳の一元化を経て、現在の登記簿に至ったということです。
また、地方の物件では境界線が不明瞭なものもあります。都市部では中々見られませんが、馬入れという農道、誰の所有ともされていない(個人所有でない)青地等も存在します。
 お客様の情報と書面による数字・現状に相違が見られる様でしたら、 上記の話を思い浮かべていただければと思います。

 この様な歴史的要因とまではいかなくとも、お持ちの土地についてはお客様のみぞ知る出来事が数多くあります。机上で資料や地図を見ただけでは正確な財産評価は行えませんし、可能な限り現地へ赴き目で確かめた上で価額を算定しております。
税法から身の上話まで色々とお話をする中で、どこに歴史が埋もれているか分からないものです。先祖代々引継がれてきた財産もさることながら、皆様の昔話・語り話も重要な無形の財産ではないでしょうか。
是非とも多くのお話を伺った上で、その財産承継に当たってのお手伝いが出来れば幸いでございます。

年金二重課税訴訟の福岡高裁判決を受けて

年金受給権と同権利に基づく年金に対する所得税の課税が二重課税かどうかについて、福岡高裁は平成19年10月25日、二重課税には該当しないとの国側勝訴の逆転判決を下した。
原審では、相続税法における年金受給権は、各年金の現在価値に引き直したものにすぎず、実質的・経済的には同一の資産に対して課税するものであり、所得税法9条1項15号の非課税の趣旨により許されないとされていた。
しかし、福岡高裁では、年金受給権と各年金については民法上、別個のものであり、相続によって取得した年金受給権については非課税とされるものの、現実に支給される各年金は、支分権に基づいて発生するものであり、所得税法35条に規定する雑所得として課税されるとしている。
年金総額を一括して一時金として受けた場合には、所得税が課税されないのに、死亡後に支払われる年金について課税がされるのは理解し難い部分もあるかもしれない。しかし、相続により取得した土地についてまず、相続税が課税され、さらに、その土地を毎年処分したならば、その譲渡益に対しても年々所得税が課税されることを年金に置換してイメージするとぼんやりと理解できそうである。所得税法施行令183条では、その年に支払われる年金のうち、年金総額に対して掛金の占める割合部分を控除することを規定している。これは、譲渡所得の計算における取得費に近い概念であろう。
ところで、相続により取得した財産について相続税の納税資金を捻出するために売却したときに譲渡所得という所得税が課せられるという実務をやっていれば当然と思われていたことについて最近ふと考えさせられた。米国資産税では、STEP-UP IN BASISという制度により、相続により取得した財産については、相続時の価額に取得費が置き換わる。つまり、相続後に取得した財産を直ちに売却した場合には、ほとんど所得税が課税されないことになる。ちなみに、生前贈与で後世に移転する場合には、取得費は引き継がれる。日本の譲渡所得の計算においても、租税特別措置法39条により、相続開始後3年10ヶ月以内に譲渡した場合には、相続税額の一部分を取得費に加算して譲渡所得の負担を緩和する制度が設けられている。それでも、主に譲渡対価の5%とされてしまう取得費を相続により移転しても引き継ぐこととされているため、譲渡所得は大きい。
所得税法9条1項15号の立法の経緯をたどると、一時所得とされるもののうち相続により取得したものについて非課税とされていたという。年金二重課税訴訟は納税者が上告をしたため、最高裁で争われることになるが、どのような判断となるか非常に気になるところである。

参考文献
 ・「関連者間における所得移転と所得税の課税対象」酒井克彦『税務事例』39巻7・8号
 ・税務通信11/5号

遺言にも種類がある

テレビなどの影響もあり、自分の相続が発生した時に家族間での争続を未然に防ぐため、遺言を作成しようかなと考えたことのある人もいると思います。一言で遺言といってもいくつか種類があるのをご存知でしょうか。

遺言は普通方式と特別方式に大別することができます。皆さんがもし遺言書を目にする機会があるとしたら、ほとんどは普通方式のものになると思います。そして普通方式の遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つに分類することができます。(ちなみに特別方式の遺言は緊急時遺言と隔絶地遺言に分類することができます)それぞれの遺言にはどのような違いがあるのでしょうか。

普通方式の遺言の特徴を簡単に説明すると以下のとおりになります。(特別方式の遺言については省略させていただきます)

①自筆証書遺言
遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自筆し、これに押印して作成する遺言書をいいます。
・メリット
   秘密が保持できる。作成方法が簡単である。
・デメリット
   内容が不明確になる。紛失・偽造の危険がある。自署・署名できない人は作成できない。

②公正証書遺言
 遺言者が証人2人以上とともに公証人役場に行き作成する遺言をいいます。遺言者が公証人に遺言の内容を口述し筆記してもらい、これを公証人が遺言者と証人に読み聞かせます。遺言者と証人がその内容を承認した後各自が署名捺印をし、さらに公証人も署名捺印をします。
・メリット
   紛失・偽造の危険がなく最も安全で確実である。
 ・デメリット
   相続財産の金額に応じて費用がかかる。手続きに手間がかかる。秘密保持ができない。

③秘密証書遺言
 遺言したいという事実を明確にしたいが、その内容を生前に知られたくない場合に利用される遺言をいいます。遺言者が遺言書に署名押印した後、遺言書を封書に封じ、同じ印章で封印します。証人2人以上の立ち会いの下、公証人役場に提出し遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名押印をします。
 ・メリット
  遺言の存在を明確にしつつ内容を秘密にできる。偽造の恐れが少ない
・デメリット
 紛失の恐れがある。遺言の存在を秘密にできない。手続きに手間がかかる。

以上のように、それぞれの遺言ごとにメリット・デメリットがあります。遺言を作成する人の希望にあったものを作成するのが一番いいのですが、やはりおすすめは公正証書遺言といえるでしょう。
遺言を作成する際には、遺留分の問題や遺言書の有効性なども考慮しなければなりません。遺言書を作成するときは専門家に相談することをおすすめします。

贈与税の非課税財産

年末に近づくと、現金贈与を検討される方が多くなります。やはり、年間110万円の暦年贈与の非課税は無駄にすまいと考えられる賢い方が多いようです。
現金等の贈与の話は大分話しつくされていますので、ぜひ右上の「ブログを検索」で「贈与」を検索していただき、実行前に再確認していただければと思います。

私からは、図らずも保険事故発生時に贈与となる契約状況があるという注意点をお伝えしたいと思います。

まず整理として、生命保険の契約においては、その内容に応じて下記のような課税関係になります。

 

契 約 形 態

保険事故

税負担者

対象となる税

契約者

被保険者

受取人

1

本人

本人

本人

満期

本人

所得税

(一時所得)

死亡

本人の遺族

相続税

2

本人

配偶者(子)

本人

満期

本人

所得税

(一時所得)

死亡

3

本人

本人

配偶者

(子)

満期

配偶者(子)

贈与税

死亡

相続税

4

本人

配偶者

(子)

配偶者

(子)

満期

配偶者(子)

贈与税

死亡

配偶者(子)の遺族

所得税

贈与税

5

本人

配偶者

(子)

満期

贈与税

死亡

上記では、契約者=保険料負担者ということを前提としています。
所得税(一時所得)となる場合とは、本人が契約(保険料負担)し、本人が受け取ることとなる場合です。
贈与税となる場合とは、本人が契約(保険料負担)し、本人とは異なる受取人が受け取った場合です。
わかりにくいのは4番の死亡時ですが、もし配偶者(または子)が死亡した場合ですと、配偶者(または子)が被相続人となって、保険金は配偶者や子の遺族(本人や契約者でない者)が受け取ることとなります。
本人が受け取った場合は本人が契約し、本人が受け取った場合ですので所得税(一時所得)となります。また、契約者以外の者が受け取る場合には、本人が契約し、契約者以外の者が受け取った場合ですので贈与税となることとなります。
3~5のような契約を現在締結されている場合には、再度それでよいかを検討する必要があるかと思います。(課税は満期時・死亡時に発生しますので、受取人の変更によって課税は生じません)

ただし、がん保険のうち、そこに死亡保障特約を付し、さらにリビング・ニーズ特約を付した場合少々事情が異なります。死亡保障特約の保険金は死亡時に支払われれば死亡保険金として取り扱われますが、リビング・ニーズ特約により死亡保険金の前払いとしての性格を有する生前給付金として受け取った場合には、それが生活や治療のために取得する分の金額であれば、本人以外の親族等が受け取っても非課税という取り扱いになっています。これは、余命6ヶ月である状況を本人に悟られたくないといった状況を配慮して、受取人を家族などとすることにつき配慮されているものです。

贈与税は数百万単位で税率が上がり、1,000万円超で最高税率の50%となりますので、年末に向けて確認・見直しを考えられてはいかがでしょうか。