現金贈与の注意点

今年もあと2ヶ月を残すだけとなりましたが、相続対策のうち年内中にすぐできるものとして現金贈与があります。
現金贈与を簡単に言うと「現金をあげます、もらいます」ということになります。
税金の取扱いでは、110万円が一つのラインとなります。贈与税の基礎控徐額が110万円となっていますので、1年間で100万円を贈与したとしても、税金は課されません。
(相続時精算課税制度を選択している場合を除きます。)
そのため、贈与金額が110万円以下であれば贈与税の申告義務はありませんが、後々問題とならないためにも贈与の証拠は残しておきましょう。

贈与の証拠作りとは例えば次のものです。

(1) 贈与契約書を作成します。
(贈与の確実性を高めるには、公証人役場で確定日付をとりましょう。)
(2) 贈与税が発生する金額を贈与し、贈与税申告書を税務署に提出します。
(3) 現金で受け渡しをするのではなく、口座振込にして通帳に記録を残します。
(4) 贈与を受ける人は、自分名義の口座を本人の印鑑で作ります。
(5) 贈与を受けた人が、通帳、印鑑、証書などを保管します。

 よくいくら贈与すればいいかという質問を受けますが、お薦めしているのは111万円です。この場合、基礎控除110万円がありますので、贈与税は千円となります。少しでも贈与税を払っておくことで、税務署へのアピールになるからです。

ただし、次のような場合には注意が必要です。
「1,100万円を贈与することが決まっていて、今は手許に現金がないので10年間で110万円を贈与する場合」
この場合、連年贈与とみなされ、一括して1,100万円に贈与税が課税される可能性があります。
 そのため、毎年の贈与が一連の行為ではないとするためには、次の証拠作りも有効です。
(1) 贈与金額を変える
(2) 贈与日を変える
(3) 贈与資産を変える

 現金での贈与をご検討されている場合、上記の点に注意して実行してください。

事業承継税制はどうなるのか!?

2007年10月16日付の日本経済新聞朝刊のトップ記事に『中小企業の相続税8割軽減』という見出しで、政府・与党が平成20年度税制改正で導入を目指す事業承継税制の制度拡充案が報じられました。
同年6月にも同じく日経新聞のトップ記事に同様のネタが掲載されましたが、そのときにはまだ、適用要件等はほとんど具体化されておらず、今後の動向に注目といった状況でした。また、ねじれ国会の影響もあり、来年度の改正は難しいのではないかという声も聞こえていました。
しかし、今回の記事では雇用条件など、ある程度適用要件等が具体化され、また民主党も政権公約に事業承継の際の税負担軽減を掲げていることから、まだ断言はできませんが、今回の制度拡充案に沿った改正が行われそうな感じです。
 ただし、未だに減免措置の規模が具体化されていないので、どの程度の規模の会社をターゲットとしているのか、また税務当局に事業実態をどのように申告するかなど不明な点が多数あり、引き続き今後の税制調査会に注目が集まります。
 具体的には、今年12月に与党税制調査会で決定し、同月に与党大綱で発表される予定です。
最後に今回の記事の内容のポイントを簡単に整理したいと思います。
1.主な内容
相続した非上場株式の課税価格を8割(現行1割)減額する。
2.ねらい
中小企業の廃業を食い止め、雇用機会の確保と固有技術の継承につなげる。
3.条件
①5~7年の事業継続を義務付ける。
②従業員の8割以上を雇い続ける。
③事業計画を提出して政府の承認を得る必要がある。
④税務当局に事業実態を毎年申告し、事業継続や雇用維持の条件が満たせなければ、軽減した相続税を改めて納税してもらう。
4.適用除外
本業とは関係のない不動産などの財産管理会社や投資目的会社は除外する。
5.動向に注目する点
 減免措置の規模(上限)・・・現行は、優遇対象が発行済株式数の総額が20億円未満で、
親族だけで5割超の株式を保有している中小企業に限っている。

<出典:2007年10月16日「日本経済新聞」(朝刊)>

相続した自社株の発行会社への譲渡

同族会社のオーナーに相続が発生し、相続人がその株式を取得した場合、
多額の相続税がかかり、納税資金に苦慮するケースがあります。
その場合に、発行会社に株式を買い取ってもらい、納税資金に充てる方法が
あります。税制上の優遇措置もありますのでここでご紹介します。
通常、個人株主が所有している自社株を、発行会社に買い取ってもらった場合、資本等の金額を超える部分の金額はみなし配当となり総合課税で課税されます。(最高で50%の税率で課税されます。)
 ところが、相続により取得した自社株を発行会社に譲渡した場合には、売却代金に対する譲渡所得課税となり、譲渡利益に対し20%の税率で課税されます。
また、一定期間内に株式を譲渡し、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」の適用が可能な場合には税負担がさらに軽くなります。
具体的には以下のように譲渡所得の計算をします。

譲渡所得=売却金額-(取得費+取得費加算額+譲渡費用)
                       ↓
         納付した相続税のうち売却株式に対応する部分

自社株は上場株式のように売却は容易ではありません。納税資金の準備として、発行会社への譲渡を選択肢の一つにしてはいかがでしょうか。
ただし、会社の買取価格の決定方法、買取り資金の準備、買取後の議決権の問題等、留意点がいくつかありますので、検討の際にはぜひご相談ください。

こんな例を考えてみましょう。亡くなられた甲さんには、プラスの財産(不動産・現金等)が3億円、マイナスの財産(債務)が5億円あったとします。相続人はAさん、Bさんの子供2人です。全体で考えると、
3億円-5億円=△2億円(基礎控除は考慮していません)
の赤字となります。このような場合、絶対に相続税はかからないのでしょうか?
 実は、財産の分割のしかたによって、かからない場合とかかる場合があります。具体的にみてみましょう。

分割(1)案…法定相続分である1/2ずつ分割する
         合計      Aさん         Bさん
財産の合計   3.0億円    1.5億円        1.5億円
債務の合計  △5.0億円   △2.5億円       △2.5億円 
純資産価額          △1.0億円       △1.0億円
(赤字のときは0) 0円     →0円         →0円
 課税価格     0円       0円          0円
となり、課税価格の合計額が0円となるため、分割(1)案の場合は、相続税はかかりません。

分割(2)案…Bさんは財産の一部を取得するが、債務は引き継がない
         合計      Aさん         Bさん
財産の合計   3.0億円    2.0億円        1.0億円
債務の合計  △5.0億円   △5.0億円       △ 0 円 
純資産価額          △3.0億円        
(赤字のときは0)1.0億円     →0円        1.0億円
   (Aさん0円+Bさん1.0億円)
課税価格    1.0億円       0円         1.0億円

 分割(2)案の場合、Aさんの△3.0億円をBさんの+1.0億円と相殺することはできないため、課税価格の合計額が上記のように1.0億円となります。この1.0億円から基礎控除額の7千万円を差し引いた3千万円に対する相続税を計算することになるのです。
 以上のように、全体を考えて赤字だからといって相続税がかからないとは限りません。また、財産よりも債務のほうが多い場合、引き継ぐプラスの財産の分だけ債務も引き継ぐ「限定承認」や、プラスの財産も債務もすべて放棄する「相続の放棄」という方法もあります。そしてこれらの手続きは原則として相続開始から3ヶ月以内となっています。
赤字であってもプラスの財産だけを考えると基礎控除額を超えていて、分割でプラスの財産のみを引き継ぐ相続人がいらっしゃるときや、「限定承認」「相続の放棄」をお考えの場合はお早めにご相談ください。

相続税対策は先ずは森を見て

相続について数多く税務相談を受けてまいりました。
「どのようなことでお悩みでしょうか?」 私の問いかけに、

 「アパートを建てると相続税って下がると聞いたのですが?」
「相続税対策で、銀行から借り入れしてアパートを建築したのですが、借入金が少なくなってしまったので再度借り入れを起こしたほうがいいでしょうか?」
「アパート収入が増えると私の相続の際、相続税が大変になって息子が苦労すると思うので、息子名義でアパートを建築しようと思うのですが?」

といろいろなご相談が投げかけられます。必ず、私は次の一言から始めます。
「相続税が今いくらかかるかご存知ですか?」
「そうじゃなくて、私が聞きたいのは相続税が下がるかどうかなのに、もうこの人ったら何いっているのかしら」と思っていらっしゃられるのでしょうか、やや、ご不満そうに「ありませんよ!」とおっしゃられます。
 「それでは今簡単に税額を算出してみましょう。お持ちの資産はおいくらぐらいですか?
ご相続人になられる方は何名ですか? ・・・・」とお聞きし、やおら、相続税算出のための早見表を持ち出し、おおまかな相続税を算出し、お客様にお見せすると
 「はあ、この金額ですか?・・・心配することなかったですね。」
 「え! 相続税かからないの! よかった。」
と多くのお客様が安心されます。
ご自分の相続が心配になったときは、まずは、相続税の試算です。
相続税対策を依頼されたお客様に、相続税の金額の報告をさせていただいた瞬間に、お顔に安堵感が現れるのを何度か拝見させていただいております。
相続税の金額を明確にしてから、納税資金は大丈夫か? 遺産分割はどうする? と対策を進め、最後に、相続税のそのものに入るのが相続税対策の王道です。
よく、木を見て、森を見ていないということが格言でいわれますが、相続税対策も、相続税がいくらかかるのか、相続税の対象になる資産は何があるのか、相続税の計算において資産の評価はいくらになるのか、と相続税という森を見ないで、相続税の引下げという木だけに主眼を置くと、間違った対策になる恐れがあります。
「うちは相続税なんて心配ないよ。そんなに財産はないし・・・」とおっしゃるお客様の算出した相続税は思いかけず多額であったり、「相続税が心配で、心配で・・・」とおっしゃるお客様は、相続税がかからなかったりということがよくあります。
病気にならないように、医師に人間ドックを受けるように、相続でご家族が悲しまれないように、税理士に財産ドックを受け、相続税の算出をまず実施されることをお勧めします。