被相続人のAさんは所得税の更正処分に対して不服申し立てを行い、さらにはその取り消しを求める訴訟をしていました。しかし、その訴訟が係属している最中、Aさんは死亡しました。Aさんの一人息子で唯一の相続人であるBさんは親の訴訟を承継し、Aさんの所得税の更正処分を取り消す判決が言い渡されました。この判決の確定に伴い、還付金及び還付加算金が相続人のBさんに支払われました。
まず、このAさんが争っていた所得税の還付請求権が相続財産に含まれるかどうかが問題となります。相続税の課税時期においては所得税の課税処分の取り消しを求めていた段階であり、相続財産を構成しないと考えることもできます。しかし、相続税の課税対象は、動産や不動産に限らず、経済的価値に対する支配権まで広く及びます。相続税法基本通達11の2-1においても金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものを財産としており、具体的には、信託受益権や電話加入権等が含まれます。また、法律上の根拠を有しないものであっても経済的価値が認められているもの、例えば、営業権のようなものが含まれます。たしかに、過納金が発生したのは取り消しが確定したときですが、被相続人のAさんが過納金の存在とその還付を求めて争っていたため、相続人のBさんに還付金という利益が生じたと考えられます。つまり、相続人固有の財産というものではなく、相続開始時においては還付金請求権という相続財産を構成すると言え、裁決においてもこのように判断されています。
次に、上記還付金請求権が相続財産に該当するとして、相続税の更正処分があった場合に、原則として国税通則法65条1項に規定する過少申告加算税が課されます。しかし、国税通則法65条4項では「第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。」として、『正当な理由』がある場合には、過少申告加算税を課さないこととしています。
本件の場合、原処分庁が相続財産として申告することを予定していない、として『正当な理由』があると裁決で認められています。仮に、BさんがAさんの名誉のために所得税の更正処分の取り消しを強く求めるあまり、還付金請求権を相続税の当初申告において相続財産として申告した場合との対比を考えれば、この理由には疑問が生じます。それでも、還付金の相続財産性について、参照すべき判例等がなく評価ができなかったことが問題であり、申告秩序の維持という過少申告加算税の要請から考えて、秩序が害されない限りにおいて、『正当な理由』はもう少し認められてもよい気がします。
参考文献
・『裁決事例集69』大蔵財務協会217頁~
・「相続後に確定した被相続人に対する還付金の相続財産該当性」高野幸大『税務事例研究95』49頁~


