今年も相続税の路線価格が8月に発表されました。三大都市圏を中心に地価の上昇基調がはっきり認められ、標準宅地の平均では、東京圏で約13%、名古屋圏9%、大阪圏8%の上昇を記録し、30%以上上昇している地点も登場してきています。土地は、遺産の中心を占めるものですから、地価上昇は相続財産の増加、相続税の増加にダイレクトに影響します。実際の不動産取引の現場では、既に一部バブル的な動きも出て来ているとも言われており、今後の地価の動向からは目が離せません。
この相続税路線価格は、被相続人が所有する土地、特に市街化地域における土地を評価する場合に利用するものですから、土地の価格は路線価格が原則のように思われがちです。
しかし、実はこの路線価格は財産評価基本通達によって定められていて、この通達の前文を読んでみると、この通達は国税庁長官から国税局長へ出されており、税務職員間の内部通達であって、納税者向けに出されているわけではないことがわかります。私達が根拠とするものはあくまで法律です。その法律である相続税法では22条において、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価」としています。つまり、本来は路線価格ではなく時価の方が原則なのです。
さらに、路線価格はその年1月1日の価格をその年1月1日から12月31日までの相続について一律に採用し、実際の相続開始日と1月1日との間の時価の変動額は反映されないという特徴があります。また、個別ケース、たとえば無道路地のような場合には財産評価基本通達による評価では限界があります。
実務では便宜的に路線価格で評価することの方が多いと思いますが、土地の個別事情を考慮し、時価鑑定で申告することを検討されてもいいかと思います。ただし、時価鑑定には恣意性が入る余地があり、調査が入った場合には税務署と議論となる可能性もありますのでご留意ください。
団信とは「団体信用生命保険」の略称で、住宅ローンの債務者が加入する生命保険です。具体的には、住宅ローンを貸した金融機関が契約者・受取人となり、住宅ローンを借りた債務者が被保険者となるもので、ローン返済期間中に債務者が死亡または高度障害になった場合には保険会社が残債の額に相当する保険金を金融機関に支払います。したがって、債務者の相続人はその後のローンを支払わなくてよいということになります。
通常、銀行ローンの場合には、保険料を銀行が負担する形で団信への加入が強制されていますが、この場合、保険料はタダではなく金利に上乗せされていることになります。なお、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)による融資の場合は任意加入となっており、金利とは別に、保険料に相当する「特約料」を1年ごとに支払う仕組みとなっています。
さて、この団信について、相続税の課税関係はどうなるのでしょうか。この場合には、①死亡保険金として相続税の課税対象となるのか、②住宅ローンの残債は債務控除できるのか、の2点が疑問となるところです。
まず①ですが、団信は契約者および受取人が金融機関となりますので、たとえ被保険者(債務者)の死亡により支払われるものであっても、その死亡保険金は相続税のみなし相続財産とはなりません。次に②ですが、過去の判例で「団信の保険金により補填されることが確実である住宅ローンの残債は相続人が支払うべきものではなく『確実な債務』にはあたらない」として、債務控除は受けられないという取扱いになっています。したがって、団信付きの住宅ローンでマイホーム(土地・建物)を取得し、完済する前に相続が開始した場合には、その被相続人の遺産はマイホーム(土地・建物)のみとなります。
団信については、みなし相続財産も債務控除もないということになりますので、相続税の観点からするとプラスマイナスゼロで損はないように思われますが、もし、被相続人が団信ではなく通常の生命保険に、ローン残債と同額を死亡保険金として契約していたらどうなるでしょうか。この場合には、死亡保険金がみなし相続財産となるのに対し、ローン残債は債務控除がとれますのでやはりプラスマイナスゼロのように思われます。ところが、この場合にはみなし相続財産としての生命保険金について、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えますので、団信と比較するとその分相続財産が減ることになります。
例えば、AさんがBさんに現金200万円を贈与したとします。そうすると、贈与税額は9万円となります。この9万円はAさんあるいはBさんのどちらが負担すれば良いのでしょうか。
日本の税法では、財産を貰った側のBさんが負担することになっています。もし、仮にAさんが負担してしまった場合には、AさんからBさんへの贈与ということになってしまう場合がありますのでご注意ください。
相続税の場合も同様です。基本ルールは、財産を貰った人が貰った財産に相当する相続税額を負担しなければなりません。例えば、相続人が、配偶者Aと子供B、Cの三人とします。そして相続税額がAさんについては配偶者の税額軽減を使ってゼロ、Bさんが1000万円、Cさんが500万円とします。ここで、Aさんが「自分は財産をいっぱいもらったから、相続税の負担の大きいBさんの相続税1000万円の一部を出してあげよう」と考えたとします。そして、仮にAさんがBさんの相続税額のうち500万円を負担したとしましょう。このような場合も贈与税の場合と同様、たとえAさんとBさんが親子と言えども、AさんからBさんへの贈与という扱いにされてしまう場合がありますのでご注意ください。
大原則は、財産を貰った側が税額を負担すると言うことです。
被相続人のAさんは所得税の更正処分に対して不服申し立てを行い、さらにはその取り消しを求める訴訟をしていました。しかし、その訴訟が係属している最中、Aさんは死亡しました。Aさんの一人息子で唯一の相続人であるBさんは親の訴訟を承継し、Aさんの所得税の更正処分を取り消す判決が言い渡されました。この判決の確定に伴い、還付金及び還付加算金が相続人のBさんに支払われました。
まず、このAさんが争っていた所得税の還付請求権が相続財産に含まれるかどうかが問題となります。相続税の課税時期においては所得税の課税処分の取り消しを求めていた段階であり、相続財産を構成しないと考えることもできます。しかし、相続税の課税対象は、動産や不動産に限らず、経済的価値に対する支配権まで広く及びます。相続税法基本通達11の2-1においても金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものを財産としており、具体的には、信託受益権や電話加入権等が含まれます。また、法律上の根拠を有しないものであっても経済的価値が認められているもの、例えば、営業権のようなものが含まれます。たしかに、過納金が発生したのは取り消しが確定したときですが、被相続人のAさんが過納金の存在とその還付を求めて争っていたため、相続人のBさんに還付金という利益が生じたと考えられます。つまり、相続人固有の財産というものではなく、相続開始時においては還付金請求権という相続財産を構成すると言え、裁決においてもこのように判断されています。
次に、上記還付金請求権が相続財産に該当するとして、相続税の更正処分があった場合に、原則として国税通則法65条1項に規定する過少申告加算税が課されます。しかし、国税通則法65条4項では「第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。」として、『正当な理由』がある場合には、過少申告加算税を課さないこととしています。
本件の場合、原処分庁が相続財産として申告することを予定していない、として『正当な理由』があると裁決で認められています。仮に、BさんがAさんの名誉のために所得税の更正処分の取り消しを強く求めるあまり、還付金請求権を相続税の当初申告において相続財産として申告した場合との対比を考えれば、この理由には疑問が生じます。それでも、還付金の相続財産性について、参照すべき判例等がなく評価ができなかったことが問題であり、申告秩序の維持という過少申告加算税の要請から考えて、秩序が害されない限りにおいて、『正当な理由』はもう少し認められてもよい気がします。
参考文献
・『裁決事例集69』大蔵財務協会217頁~
・「相続後に確定した被相続人に対する還付金の相続財産該当性」高野幸大『税務事例研究95』49頁~
前回のコラムでもあったとおり、相続が起こっても税金が出ないかたは多々いらっしゃるかと思います。かからないから安心だと思っていらっしゃる方はご注意ください。
配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を適用することによって、相続税がかからないことになる場合には注意が必要です。なぜなら、これらの特例は申告することが適用要件となっているからです。
それ以外にも相続が起こった際には行わなければならないことは葬儀手続き以外にもたくさんあります。
おおまかなものでも、預貯金口座の相続解約、公共料金の名義変更、保険契約者の名義変更、賃貸住宅の名義変更(借地権契約の名義変更を含む)、自動車等の名義変更、ゴルフ会員権などの名義変更、株式名義の書換請求、不動産の所有権移転登記、債務者変更申込、とたくさんあるのです。
特に注意していただきたいのは不動産の登記です。
実際にあった話ですが、相続が起きた際、税理士に相談したところ相続税はかからないとのこと。配偶者と兄弟間ではよかったとほっと胸をなでおろしていました。しかし、「でも相続登記は必要ですから」といわれ、今度は司法書士に相談したところ、「お父さん、前回の相続で相続登記していないですね・・・。お父様のご兄弟等の了承を取らないと登記が出来ませんよ。」。そこで遡って相続関係図を作成してもらうと亡くなったお父さんはご兄弟が9人おり、かつ、ほとんどの方がお子さんが2・3人いて、かつ、ほとんどの兄弟が亡くなっている状況でした。
単純計算で亡くなった方を除く8人×3人=24人から同意書を貰わなければ相続登記が出来ない状況だったのです。しかも、音信不通の方ばかりでしたので、途方にくれてしまったようです。
こんなあとあとの迷惑にもつながりますし、面倒の元ですので、相続発生後の名義変更・登記手続きは忘れずに行いましょう。


