目的を間違えていませんか

 相続税の申告のお手伝いを数多くしていますと、「えっ!」と驚くようなことがあります。
 相続税を減らすことが目的となっていて、そのためにあまり資産的価値の無いような資産を多く所有している人がいるからです。

 そうではなくて、より多くの財産を次世代の後継者に残すことが本来の目的だと思います。
つまり、目的はより多くの財産を残すことであり、相続税の引き下げはその手段の一つだと思うからです。

そのような観点から、100億の資産をもっている方の相続税を考えてみます。

 たとえば、100億円の財産には約50億円の相続税がかかります。それならば、そのうちの20億円を生前に子供に贈与して10億円の贈与税を払い、子供の税引き後手取りが10億円とします。

 この10億円の資産を運用して大きく資産を増やすのです。簡単ではないと思いますが、年7%で10年間運用すれば大体倍の20億円になります。その運用して増えた財産は、当然子供のものですから、相続税とは無縁となります。

 ならば親御さんが運用しても同じではないかとの意見も出てきそうですが、親御さんは資産運用に関しては、安全確実というような堅実な時代に生きてきた人が多く、ある程度のリスクをとりながらの資産運用は若い人に任せた方がいいと思います。

 親御さんたちにはこのような発想が難しいと思いますが、比較的若い人には受け入れてもらえるのではないでしょうか。

 生前相続としての相続時精算課税を活用すれば、相続税の前払い分20%の贈与税でとりあえず済みます。したがって、手取りは約16億円ですので、もっと大きな財産を運用することができます。

そのような資産運用のお手伝いも我々の仕事ではないかなと最近つくづく感じております。

 相続税を減らすことが目的ではなく、現状も将来も50%の税金であれば、先に払いその残りを運用して増やす、このような発想が必要な時代となりました。

内縁の妻を選択した場合のメリットは?

 近頃、結婚という選択をせずに生活を共にするカップルが増えています。俗に言う「内縁関係」というものですが、このような内縁関係を選択した場合に相続や年金ではどのような取扱いになっているのでしょうか?
 
 民法の規定により法定相続人になれるのは、配偶者(法律上の夫または妻)、子、父母、兄弟姉妹の4種類の立場の人です。よって、内縁の妻には相続権はないことになりますので、遺産を残したい場合には遺言を書く必要があります。

 しかし遺言により遺産を取得できたとしても、相続税法上は配偶者とは認められないため、本来配偶者であれば認められる配偶者の税額軽減等が適用できず、さらに相続税額が2割増になってしまいます。

 配偶者に相続権を認めている主な理由は、名義上は亡くなった方単独の名義になっている財産でも、その財産の形成に配偶者が貢献している場合が多く、潜在的には持分権を持っていると考えられること、また、その方が亡くなったことにより扶養を受けられなくなったことの代わりとしての意味があると解されています。このことから考えると、法律上の婚姻関係はないということで内縁の妻に相続権を全く認めないというのは、バランスを欠いているように思えます。この配慮として、相続人が不存在の場合には、内縁の妻に特別縁故者として遺産の全部又は一部を取得させることを認めていますが、あくまで限定的な取扱いと言えます。

 民法及び相続税法においては、法律上の婚姻関係が重視されていると言えますが、一方遺族年金においては、内縁の妻に対しても、年金受給権の引継ぎを認めていますし、健康保険の被扶養者になることができるなど、より生活の実態に合わせた取扱いが行なわれています。
このように、内縁関係に対する配慮も広がってきていますが、相続という観点から見ると内縁関係を選択するメリットは少ないと言えます。

親からもらったお金には税金がかかるのか

 「誰かから何かをもらったら贈与税がかかる」ということは、皆さんなんとなく理解していることだと思います。ところが、その「誰か」が親だったら・・・。たとえば、生活費や学費の仕送り、入学祝い、車やマイホーム資金の援助など。このお金には、贈与税がかかるのでしょうか。
 
 親からもらう生活費や教育費も、法律行為としては贈与に該当します。では、生活費や教育費にも贈与税がかかるかというと、「扶養義務者からもらう生活費または教育費のうち通常必要と認められるもの」については贈与税の非課税とされていますので、贈与税はかかりません。ただし、この生活費や教育費は必要な都度その支払いに直接充てることが原則とされていますので、たとえば4年分の教育費として一括で受け取っておき、その金額を貯蓄したり投資資金や資産の購入費用に充当したりした場合には、非課税とはなりません。
 
 また、入学祝いについても、「香典や年末年始の贈答、祝物またはお見舞いのための金品であって、社会通念上相当と認められるもの」に該当するものであれば、贈与税を課税しないものとして取り扱われています。

 それでは、車やマイホームなどの資産を購入する場合に親から貰ったお金はどうなるのでしょうか。このお金については、贈与税の非課税として規定されていないので、原則どおり贈与税が課税されることになります。ただし、車やマイホーム購入に際し親から援助を受けた金額が、贈与を受けたのではなく「親ローン」として借りたのだということでその後きちんと返済をしていれば、贈与税の対象とはなりません。
 
 ここで、贈与税の納税が発生しないように「親ローン」の形式をとっておき、その後子が返済しなかった場合にはどうなるのでしょうか。この場合には、贈与をした親に相続が発生した場合に問題となってきます。

 「親ローン」は親の立場からいうと「債権」、つまりプラスの財産になりますので、その「親ローン債権」を相続した人に相続税がかかるということになります。つまり、債務者である子が相続した場合には、借りたときには贈与税を払わずに済みましたが、相続により自分が「債務者かつ債権者」となって返済不要となった時点で、相続税を支払うことになるわけです。

 なお、そもそも「親ローン」の契約時点で「あるとき払いの催促なし」ということで当初から返済しないつもりであったにもかかわらず「親ローン」の形式を仮装していたに過ぎないと判断された場合には、当初契約時に贈与税を支払うべきであったとして贈与税のほか延滞税や加算税の支払いをしなければならない場合もありますので、注意が必要です。

「相続時精算課税制度」を利用した相続税の節税対策!

 「相続時精算課税制度」とは、親から子供への贈与について、とりあえず入口で、「2,500万円までの贈与は非課税、これを超える部分について一律で20%で課税」され、相続時に他の相続財産と合算して相続税と納めた贈与税額を出口で精算するという制度です。つまり、本来的にはこの制度を利用したことによって相続税が安くなったり高くなったりするということはないのです。

 しかし一点、この制度で注目すべき点があります。それは、相続時精算課税制度により贈与を行った時点の時価で財産を移転できるということです。仮に、この制度により5,000万円の土地を子供に贈与したとします。その数年後に実際に相続が発生し、その時点ではこの土地の時価が1億円に値上がりしていたとします。この制度を適用していなかった場合は、この土地の相続発生時の時価である1億円に対する相続税がかかります。しかし、この制度を適用し生前に贈与を行っていたことによって、相続時には5,000万円に対して相続税がかかるということになるのです。もちろん、逆の状況もあり得ます。つまり、相続時精算課税制度を利用し贈与を行った時点より、相続発生時における時価の方が下落していた場合には、この制度を使い贈与を行ったことが裏目に出て損をしてしまいます。

 この制度を利用し生前に贈与を行った方がよいものは、将来値上がりが予想されるものです。一概にこれということはできませんが、一般的には収益物件や株式公開直前の株式などと言われています。

 しかし、注意すべき点は、この制度には様々な落とし穴があるということです。適用対象者の要件や、一度選択したら取りやめができないこと、年間110万円という暦年贈与の非課税枠が使用できなくなるということなどです。単純にこの制度を使用すれば誰もが得をすると言うわけにはいきません。
 
よって、制度適用時には相続の専門家に相談することが必須です。
辻・本郷税理士法人 相続事業部では、相続時精算課税制度に関するコンサルティング業務を提供しております。ぜひ、ご相談ください。